1.はじめに
生体と物質の相違は、どのようなところにあるのだろうか?
本論文では、この疑問にせまるため生理学と心理学という異なる学問体系を紐解きながら、
生体と物質の相違について考えてみることを目的とする。
まず、生理学における生体と物質について考えてみよう。
1-1.生理学における生体と物質の相違について
生理学における生体とは、その基本要素が「細胞」であるものであり、
物質とは、その基本要素が「元素」であるもののことである。
生体も物質も、電子・陽子・中性子・素粒子からできていることは明らかであるが、
化学的に物質の特性を失わない最終の要素が「元素」であり、
生物の特質を失わない最終の要素が「細胞」であると言い換えることもできる。
アメリカの生理学者Cannonは、生体が常に合成と分解、摂取と排泄、刺激と反応を繰り返し、
恒常性による環境への適応をしていると定義した。
また、高木・中山(1960)は、生体をエネルギー消費、反応、成長、増殖、死亡、適応するものと定義する。
2つの生体に関する定義は、表現こそ違えど同じことを前提にしている。
その前提とは、生体における様々な機能は、すべて細胞なしには語れないということである。
なぜなら、そのような機能は生体に備わった細胞の働きに他ならないからである。
それは、福田・小川(1972)が、
「生体を成立させている器官や組織の働きは、個々の細胞の働きを土台としている」
と記述していることからも分かる。
そして、生理学では生体と物質の中間の存在も定義している。
その存在とは、ウイルス(Virus)である。
ウイルスは核酸とタンパク質からなる複雑な化学物質であると同時に、
ある環境では生物の特徴を示すようになる(山本ら、1982)。
[文献]
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福田邦三・小川県三 1972 人体の解剖生理学,pp.9-11,南山堂.
高木健太郎・中山昭雄 1960 生理学入門,朝倉書店.
山本敏行・鈴木泰三・田崎京二 1982 新しい解剖生理学,pp.1-8,南光堂.