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1.はじめに


 現在、我々が日常生活を営む上で都市は重要な役割を果たしている。

都市にはヒト・モノ・カネ・情報といった経済的活動と切っても切れない要素が多く流入し、

一つの流れが作り出されている。


都市というのは非常に不思議な空間である。

様々な人種・年齢・宗教・思想・目的などを持つ人々が一つの空間に集まっている。


様々な意匠を施された超高層ビルが乱立するさまは、

我々に畏怖や威厳といった複雑な感情を抱かせる。

さらに、多くの看板や広告ポスター、ネオンサインが溢れており、圧倒的な情報量を有している。

行き交う人々はうねりと混沌を生み出し、

それはさながら宇宙が誕生する前のような様相を呈している。


1-1.都市と宇宙論(コスモロジー)の関係


ところで、都市構想と宇宙論とは深く関係している。

市川ら(1989)は、都市と宇宙論の関わりと変遷について論じている。


まず、伝統的な社会では<宇宙-都市-建築-人間の身体>が入れ子構造をなしていると考えられ、

ルネサンス期には大宇宙と小宇宙(人体)が対応関係をなしており、

人間は自分の位置や意味を確信できたという。


そのような宇宙観において人間は、空間に様々な異質性・異方性・特異な場所を見出し、

理想都市として中心型(放射状)を構想した。

例えば、パリなどが有名である。





しかし近代になると、コペルニクスやニュートン、アインシュタインらの出現により、

宇宙は均質の空間で中心を持たないことが分かると、

都市のスタイルは大きく変わることになる。


その空間概念は三次元の立体座標で区切ることのできる均質なものへと変化し、

格子型(グリッド状)の都市が生まれることになる。

例えば、バルセロナが有名である。



バルセロナ


そこでは、箱型の画一的なビルが建ち並び、あらゆる空間が均質化していくという。

すべての空間が均質化されると、内部空間も均質化し、単一の機能を果たすだけの

機能的・合理的な空間へと心理的に変質するため、機能主義的な人間を生み出していく。


迷うことが楽しい街というのも存在する。

例えば、ザルツブルグやヴェネチアといった街である。




ヴェネチア



ザルツブルグ

これらの街はメインストリートを中心に魅力的なスポットが散りばめられ、

安心して迷える街になっているのだ。


仙田満の提唱する「遊環構造」も、これらの街に似た構造になっている。



これまで放射状、グリッド状、迷うことが楽しい街を紹介してきたが、

どれも異なる構造と特色を持っており、非常に魅力的である。


次回は、記号論と都市空間と人間との関わりについて論じていこう。


[参考文献]


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市川浩・原広司・伊藤豊雄・毛鋼毅広 錯綜体としての建築と都市-コスモロジーをめぐって-.

日本記号学会(編) 1989 都市・建築・コスモロジー(記号学研究9).東海大学出版会.pp.13-54.