
人間の感情の中で「恐怖」は、最も根源的かつ原始的である。
それは動物においても同様である。
恐怖は、自らが生き残るために最も重要な感情なのである。
恐怖という感情は、脳の扁桃体が活動し、大脳皮質によって生み出される。
恐怖自体は扁桃体で生み出されるわけではなく、脳の神経活動の副産物にすぎない。
生み出された恐怖は、脳に記憶として植えつけられる。
扁桃体は、記憶力を促進し強固にする。
記憶に植えつけられた恐怖によって、危険な場所・敵・食物には近づかないようになるというわけだ。
さて、サルの扁桃体を破壊するとどうなるか。
イヌやヘビといった天敵に容易に近づくようになる。
しかも、イヌと交尾をしようとし、ヘビを口に咥えてしまう。
つまり、(オーラル)セックスの欲求が暴発してしまうわけだ。
ネコの扁桃体を破壊した実験では、
4匹のネコを同じ檻の中に入れておくとオス・メス関係なく交尾し始めるそうだ。
ネコのオスの生殖器には剛毛が生えているため、交尾時にはメスに多大な激痛が走る。
交尾時にメスが耳をつんざぐような声をあげるのは、痛みによるわけだ。
それにもかかわらず、交尾は止まらない。
人間の場合は扁桃体(+側頭葉前側皮質)を損傷すると、
クルーバー・ビューシー症候群という名前のつく症状が現れる。
何でも口にふくむようになり、何とでもセックスしようするそうだ。
ある男性は、歩道相手にセックスを始めて逮捕されたという。
このような事例を考えると、欲求はすでに存在していることになる。
それを扁桃体が活動することで押さえつけているということだ。
扁桃体の活動が我々の理性の座ということになるのだろうか。
ここで注意したいのは、恐怖が理性を生み出しているということではないということだ。
しかしながら、セックスは恐怖により支配され、理性を保っている部分があるのではないかと考えることがある。
セックスは最も死に近い行為だと言ったのは、田口ランディさんだったろうか。
非常に理解できる。
セックスは死に近づくということで、とてつもなく恐ろしい行為なのではなかろうか。
ビクビクしながら、ピクピクしちゃう!みたいなね。
でもね、私は裸の美女が自分の部屋で横たわっていても、
一晩中その美女の絵を描いていられる自信がある。
強力な理性は、強力な恐怖からきているかもしれないという話。
そんな自慢は、どうでもいいですねと。
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ビジュアル版 脳と心の地形図―思考・感情・意識の深淵に向かって/養老 孟司
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