河童忌 | ミナミのブログ

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のんびり、、まったり

■ 2002/07/24 (Wed)会社のHPの管理人室の文章から

 

多寡がタイル屋のお女将さんでありながら

時には難しい経済のお話をしなければならないことがある。

そんなわけで少し前まで

マネジメント21という本を読んでいた。

今はネットの世界で充分事足りている。

経済誌を読んだからといって

究極の企業力などという言葉をさも知った風に語ることは

流石に出来なかったが

その本の中に書かれているエッセイには凄く興味を惹かれた。

思い起こしてみると

経済誌と銘打って売られている本の中のエッセイは

思いの外面白いものが多いように思える。

あるとき

そのマネジメント21の中に芥川龍之介の死についての

エッセイがあった。

おおもとの題名は、芥川龍之介と鰻、だったと思うが

その作者のお話によると

海軍機関学校の同僚として

また漱石の門下同士として芥川と親しかった内田百間は

「河童忌」という随筆のなかで

「あんまり暑いので

腹を立てて死んだのだろうと私は考えた」

という説を立てているという。

あんまり暑いから。

今日は、その芥川龍之介が亡くなった日。

彼の代表的な作品から、河童忌と称されている。

確かに河童は暑さに弱そうだ。

人の死や、出会いと別れなどというものは

案外簡単な理由で為されているのかも知れない。

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内田百間といえば

黒澤明による、まあだだよ、という映画

 

彼の門下生がそろそろ亡くなったかと集まれば

まあだだよと返事をする

 

言葉の響きによって滑稽にも思えるが

なんとも言えない哀しさを感じる

 

内田百閒は戦後、弟子たちの計らいで

焼け残った廃材を集めて造ったバラックの家に住み

弟子たちは百閒の弔いを理由に集まる

その集まりにより、妻の飢えを凌ぐのだが

それを悟らせないために

弟子たちは陽気にまだ生きているのかと歌う

 

そして、内田百閒から

暑いからとその死を語られた

芥川龍之介は

自己の回顧録のような

南京の基督という小説に

従軍記者としてその地に赴き

一人の薄幸の女性との生臭い恋の結末と

睡眠を妨げるために服用していた興奮剤

所謂ヒロポンで心を病んで

苦しみ果てる結末を描いて

結局割腹して果ててしまう

 

いずれも戦争というキーワードが有るのだが

バブル期の、世界一の経済大国とされていた頃

武器こそは携えていなかったが、多くの人が

外国に赴いて、寝食を惜しまず労働をした

 

結果、父親不在の家庭がたくさんできて

歪な家族が出来上がっていった

 

それは積み木崩しという小説に表現されて

 

豊かなために道路や街が整備され

夜を徹して街灯が燈り

真夜中に路上で過ごす未成年の女の子が多くなったのも

バブルの頃からだった

 

まるで大本営発令のようにテレビや雑誌では

まやかしの都会の賢覧ぶりを伝えて

 

外界から知識を得た子ども達は

日ごろ不在の父親や

そのことに不満を積もらせている

母親の意見を疎ましく思い

 

耳障りの良い言葉の集団の中に入っていく

 

戦争では国民が平等に貧しく、平等に苦しんだが

バブルの頃はそれぞれに形が違い、価値観も違い

 

だから

みんなで頑張るという場面が無くなり

個人主義の世界が出来上がって行った

 

それは多くの国民が望んだ形で

たくさん働いてお金を得るよりも

家庭を大切にして

自分を大切にする生き方を選ぶ

 

もし日本が第二次世界大戦の引鉄を引かず

戦争という選択をしていなければ

今の時代はどんな風だったのだろう

 

今生きている人の戦前の日本の在り方は

軍国主義という形から始まっている

 

それ以前は侍の時代であり

士農工商という身分差別の中で成り立っていた

 

戦後、全ての人は自由であり

言論も、政治に関わることも

宗教や思想に関しても

他から制約を受けることは無くなった

 

最近、ネットで見ていると、何故かその自由が

だんだんと窮屈になっているように思える

 

嘗て、BSで、極右とされる方が

 

思想に関していえば

右も左も、突き詰めれば暴力になる

 

と発言されていて

物凄く腑に落ちたことが有った

 

今の時代は、家族や国を守るために

自分の命を削って戦うという場面はない

 

何故ならそうしなければならないほどの苦しみが

実際には無いからなのだと思う

 

平和とか、尊敬する人、愛する人の命とか

実際に無くなって初めて

後悔という思いを抱くのだろうと思う

 

もういいかい

まあだだよ

その時点で気が付くか否か

 

後悔先に立たず

 

何を一番大切に思うか

人の生き様はそれによって変わっていくのだろう

 

そう言えばマネジメント21は今でも発行されているのだろうか