私には父と呼ぶ人が二人います。
一人は実の父で、もう一人は夫の父
二歳の時に母の都合で父と別れて
七歳の時に一緒に暮らし始め
その年に怪我が元で四年ほど入退院を繰り返した私は
父とは親娘の会話はしたことなく成人しましたが
鹿児島の庄屋の跡取りとして生まれた父は
かつて商船学校の教官だったことと
父の祖父が当地に小学校の前身の寺子屋を建てた人で
祖母が武士である島津の家系の人であったことで
人との関わりを人生の先輩として教えてくれました。
自分より弱い人を守るような人間になりなさいと。
一度だけ、お父さんなんだな、と思ったのは、中学で有った運動会を
仕事を抜けだしたのでしょう父がフェンスの向こうから自転車に乗ったまま
見ていたことです。
私と目が合うと、直ぐに消えましたが。
夫の父は、行くと、冬には土壌堀に連れて行ってくれて
夏には蛍を観に誘ってくれて
昼間、誰も居なくなった居間で、義父と義母と私の三人になると
義母が見ているプロレスに茶々を入れて
それを窘める私に、笑いながら、嫁子は怖い怖いと逃げていく
そんな人でした。
二人の父のおかげで、私はいろいろな世界を見ることが出来ました。

