





紅葉は、一日約25キロの速さで、南下するのだそうです。
山の美しさを例えれば、平城京の西におわす竜田姫。
もう、20年も前になるでしょうか、ゴルフの帰りの渋滞を避けるために一般道を迂回して帰ったことがありました。
途中、丹沢のあたりに差し掛かると、山は大西日に染まり、色とりどりの木の葉が美しく、
道路の間際まで広がっていました。
運転手である友人は、女神の裲褂(かいどり)の裾を踏まぬように用心しながら車を走らせて。
西日はやがて、山の向うにその光を仕舞いこみ始めます。
そして、カーブを曲がるあたりで振り返ると、そこには既に、女神の姿はなく、冷ややかな山の線が、
薄暮の中に黒い影と化していました。
ほんの数分のことでしたが、私は確かに、秋の女神の晴れ姿を見た。
そんな満足感を道連れに家路に急いだものでした。
街を歩き、街路樹の一枚が林檎の実のように色付いているのを見つけると、今でもあのときの
山の美しさを思い出します。
俳句では、
紅葉は、黄葉(もみじ) もみいづる、もみづる、照葉、夕紅葉、紅葉山、紅葉の帳(とばり)、谿紅葉 庭紅葉 紅葉の淵 名木(なのき)紅葉 雑木紅葉、竜田草、色見草、妻恋草
などとして、秋の季語になります。
紅葉とは、特定の葉のことではなく、葉が紅(もみ)色に色付くことを言います。
黄色に色づくことは、黄葉と表現します。ですから、銀杏や白樺など黄色に色づく葉は、黄葉とします。
戸塚駅から京急ニュータウン行きのバスに乗り、終点で降りると、横浜市が管理する、
舞岡公園の駐車場があります。
その駐車場の周りは芝を敷いた公園になっていて、そのまま、港南区から戸塚区側に渡る橋があります。
その橋の手前には、満天星とも、燈台躑躅とも書き表す、どうだんつつじの、赤々とした垣が有り、
橋を渡ると直ぐに、鮮やかな紅葉の林が始まります。
夕日の頃、その場所に立つと、紅葉に照らされた赤い夕日が道を染めて、不思議な世界を作ります。
駐車場の前の道を、バス停の方ではなく、坂道のほうに引き返すと、坂を下りきったところには、
梅の林があり、その少し奥に、日の出ているうちだけ経営している我侭な喫茶店があって、
今は亡き人生の先輩と、お供のシェパード君と、待ち合わせて珈琲を飲んだ日を懐かしく思い出します。