
先日、テレビで女優が言われていたことには、今の女性の適齢期は、33あたりなのだそうで、
我が家の娘もそれに漏れなく、毎日仕事に追われて、お雛さまどころではない様子です。
そんな彼女に根気良く、10年もの間お付き合い下さる奇特な方に感謝しつつ、
私は明日、お雛様を出そうと思っております。
雛祭りは、陰暦の三月初めの巳の日を節日としたのが始まりで、三世紀頃から三日と定めて、
上巳(じょうし)となりました。
中国の古代の風習に、三月の初めの巳の日に、水辺に出て禊を行い、酒を飲んで厄を払う行事で
あったものが、曲水の風流韻事になり、やがて日本に伝わってきたということです。
節日の季語としては、他に、重三、元巳(げんし)、上巳(じょうみ)があります。
雛を売るお店として、雛の店、雛見世、雛売り場。
貞享年間の、江戸鹿子というものによると、
2月27日から3月2日まで、中橋・尾張町、拾間棚、糀(麹)町四丁目に雛の市が立ったとあります。
その後、浅草茅場町、池端仲町、牛込神楽坂上、芝神明町、そして、京都には、四条、五条、
大阪の御堂前、順慶町に、それぞれ市が立つようになり、明治に入り、デパートが出来てからは、
その雛売場が賑わうようになったとのことです。
今では、お正月の始まりと共に、デパートでは一斉に雛人形の売り出しをして、
時にはクリスマスの翌日、CMが流れたりして、ちょっと興醒めすることもありますが。
雛祭の季語は、雛遊び、雛壇、雛人形、親王雛、内裏雛、官女雛、五人囃、矢大臣、
三人使丁(さんにんしちょう)、雛の調度、雛の貝、坐雛、
その年代を表す、室町雛、寛永雛、元禄雛、享保雛、
形を現す、京雛、木彫雛、菜の花雛、立雛、糸雛、紙雛、折雛、
粉河雛(和歌山県の粉河寺の流し雛)、変り雛、雛荒し=(雛祭りの供え物をもらい歩いたり、
女性や若者が家々の雛を見て歩き、接待を受けたりして楽しむこと)
雛合(ひなあわせ)、ひいな、雛の間、雛箱、雛の櫃、雛葛篭、雛の膳、雛椀、雛の酒、雛の宴、
初雛、古雛、譲り雛、雛の宿、雛の客、雛の燭、雛納め、桃の酒。
このほかにも、桃の節供、三月節供、弥生の節供、桃花(とうか)の節、桃の日 があります。
風流な所では、元禄から宝暦にかけて行われた、雛の使い、や、陶淵明が桃柳を好んで庭に植え、
長寿であったことから、桃と柳を飾る、柳の鬘、という季語。
鳥取県用瀬町では、今でも、旧暦の三月三日に、雛荒しという行事と共に、
雛流しも行っているそうです。
また、吊るし雛として、九州の柳川では さげもん 、静岡の稲取では、つるし雛 山形の酒田では傘福
というものがありますが、平成七年に改定された季語集には有りませんでしたので、
その地域独自の季語になるのだと思います。
私の伯母は、嘗て、野沢節子さんと一緒に、大野林火のもとで俳句を学んでおりました。
私が俳句倶楽部などというHPを作ったのは、その伯母が不治の病の床から、毎日のように、
再び句会を開くことが出来るかしら、と、私に電話を下さったからです。
結局伯母は句会を開くことを夢見ながら、永久の旅立ちをしてしまいました。
今は、あちらの世界で、母や、友人達と、楽しい句会を開いていることでしょう。
現実の世界では、伯母には、伯母に勝るとも劣らない娘が、伯母が創始した結社の主宰として
君臨しているので、私が俳句の会を心配してあげる必要はないのですけれど、
一人でも多くの人がたとえ句会に参加出来なくても、俳句を楽しんでもらえたら、と、
そう思っております。
その伯母は、どのように稚拙な俳句を詠んでも只管に褒めて下さいましたが、
写真で観たり映像で観たりした場面を俳句で詠むことだけは絶対にしてはならない、
と、教えて下さいました。
ですから、さげもんやつるし雛や傘福など、その土地独特な風習や行事を季語にしたいときは、
その地に赴いて、尚且つ実際に見て、初めて認められるものだと思っております。