角田市で開催されたかくだ牟宇姫ひなまつりのステージで,能楽師による伊達政宗公の創作舞踏が披露されると聞いて見にいって来ました。
重要無形文化財総合指定保持者 観世流能楽師 山中迓晶(がしょう)氏演じる伊達政宗公がこちら
写真ではわかりにくいのですが,こちらの衣装,雪輪の他に五色水玉模様があしらわれています。
伊達家の五色水玉模様陣羽織をモチーフにしたのかなと思いました。
伊達家の五色水玉模様陣羽織をモチーフにしたのかなと思いました。
最初に,初めて見る人でもわかるよう山中氏自ら丁寧に解説していただきました。
12歳で嫁ぐ牟宇姫と,愛娘を見送る父政宗を主軸に構成された作品であること。
結婚式でおなじみの高砂と,なぜ高砂が祝いの席で謡われるのかなどについて。
12歳で嫁ぐ牟宇姫と,愛娘を見送る父政宗を主軸に構成された作品であること。
結婚式でおなじみの高砂と,なぜ高砂が祝いの席で謡われるのかなどについて。
聞きなれない言葉の説明などなど。
元ネタを知っているとより楽しめるのは芸術にもあてはまるのだなと,もっといろんなものごとを学んでいきたいと思いました。
元ネタを知っているとより楽しめるのは芸術にもあてはまるのだなと,もっといろんなものごとを学んでいきたいと思いました。
メインの登場人物は2人。政宗公と牟宇姫。
そして,音の妖精が登場します。
音の妖精が奏でる笛の音だけが流れる場面は,時間が経過することを表しています。
そして,音の妖精が登場します。
音の妖精が奏でる笛の音だけが流れる場面は,時間が経過することを表しています。
残念ながら撮影は禁止だったので,シナリオをご紹介します。
開演
政宗 「そもそもこれは。陸奥の覇王,伊達政宗とは我が事なり。
さても戦国の世となりて。諸国の戦,暇無きに。
この身はさながら梵天の。
方便の剣,敵を平らげ。
愛するこの地を守らんと。
鬨の声を上げにけり。」
さても戦国の世となりて。諸国の戦,暇無きに。
この身はさながら梵天の。
方便の剣,敵を平らげ。
愛するこの地を守らんと。
鬨の声を上げにけり。」
(補足:方便の剣とは「守るための刀」を意味するとのこと)
政宗 「馬上少年過ぐ
世平かにして白髪多し
残躯天の赦す所
楽しまざれば是いかん。」
世平かにして白髪多し
残躯天の赦す所
楽しまざれば是いかん。」
牟宇 「いかに父御前に申し上げ候。
名月の御酒宴の調いて候。
とうとう座敷へ御参り候らえかし。」
政宗 「さては遅なわりて候ものかな。
いかにお牟宇。
とてもの事に一指し舞候え。」
牟宇 「酒宴をなして糸竹の。」
政宗 「声澄み渡る月夜かな。」
名月の御酒宴の調いて候。
とうとう座敷へ御参り候らえかし。」
政宗 「さては遅なわりて候ものかな。
いかにお牟宇。
とてもの事に一指し舞候え。」
牟宇 「酒宴をなして糸竹の。」
政宗 「声澄み渡る月夜かな。」
政宗 「盃も月日も重なりて。
光陰は矢のごとし。
おお。
清らかに,およすけたるものかな。
はや御輿入れの時節なるべし。
婚礼の儀,執り行わん。」
光陰は矢のごとし。
おお。
清らかに,およすけたるものかな。
はや御輿入れの時節なるべし。
婚礼の儀,執り行わん。」
(補足:「およすけたる」は「美しく成長した」の意味)
政宗 「高砂や。
この浦船に帆を上げて。
この浦船に帆を上げて。
月もろともに出で潮の。
波の淡路の島影や。
遠く鳴尾の沖過ぎて,はや住之江に着きにけり。
はや住之江に着きにけり。」
この浦船に帆を上げて。
この浦船に帆を上げて。
月もろともに出で潮の。
波の淡路の島影や。
遠く鳴尾の沖過ぎて,はや住之江に着きにけり。
はや住之江に着きにけり。」
政宗 「天高く,地久しくしてつくるときもあるまじ。」
牟宇 「弥生の雛の祭りも過ぎぬれば。
花の面も曇りがちに。
故郷を思いの露の置き所。
何処に父御前おわすらん。」
政宗 「牟宇姫いかにおわすらん。」
牟宇 「父御前いかにおわすらん。」
花の面も曇りがちに。
故郷を思いの露の置き所。
何処に父御前おわすらん。」
政宗 「牟宇姫いかにおわすらん。」
牟宇 「父御前いかにおわすらん。」
政宗,牟宇 「天の原。
ふりさけ見れば陸奥の。
蔵王の山に出でし月かも。」
政宗 「そこはかと無き寂しさに。」
牟宇 「取る筆先もしおしおと。
慣れし思いの言葉の露。」
政宗 「交わすや文の数々に。」
ふりさけ見れば陸奥の。
蔵王の山に出でし月かも。」
政宗 「そこはかと無き寂しさに。」
牟宇 「取る筆先もしおしおと。
慣れし思いの言葉の露。」
政宗 「交わすや文の数々に。」
政宗,牟宇 「もの遠にうち過ぎ候。
折ふしの文にて,一しお眺め入り申し候。
いかなりと,この月内には下るべし申し候。
そこもと皆々,息災のよし,心安く御入り候。
年寄りも何事もなく堅固の事に候。
詳しくはあとより申すべく候。
何とも何とも暇なく候いて,
御返事も読め可ねべく申し候。」
政宗 「月日は十五の望月の。
お牟宇。」
牟宇 「むつ」
政宗,牟宇 「まいる」
折ふしの文にて,一しお眺め入り申し候。
いかなりと,この月内には下るべし申し候。
そこもと皆々,息災のよし,心安く御入り候。
年寄りも何事もなく堅固の事に候。
詳しくはあとより申すべく候。
何とも何とも暇なく候いて,
御返事も読め可ねべく申し候。」
政宗 「月日は十五の望月の。
お牟宇。」
牟宇 「むつ」
政宗,牟宇 「まいる」
終演
牟宇姫は山中氏の娘さんである山中つばめさんが演じられ,年齢もほぼ牟宇姫と同じくらいということで,まるで目の前に政宗公と牟宇姫がいらっしゃるかのようでした。
文をやりとりしながら互いを想う場面からの本歌取りが素敵でした。
筆まめで有名な政宗公は,牟宇姫にもたくさんの文を送っており,角田市で大切に保存されています。
牟宇姫お輿入れ400年を記念して,牟宇姫についてまとめられた冊子「伊達政宗公の次女 牟宇姫ものがたり」にも手紙が掲載されています。
牟宇姫お輿入れ400年を記念して,牟宇姫についてまとめられた冊子「伊達政宗公の次女 牟宇姫ものがたり」にも手紙が掲載されています。