
◆公開方法について
・文化財保護法の定めによって国宝や重要文化財について「展示」を行うためには国の許認可が必要。
・防犯,防火対策の他,展示の2か月前までに届出が必要で,展示は60日以内などの細かい定めがある。
参照:国宝・重要文化財の公開に関する取扱い要項
・今回は上記の制約を受けないように,不特定多数への展示ではなく,身分証の提示と所有者本人の立ち会いの元行う鑑賞会の形式が取られました。
◆東北の刀について
・東北は日本刀の源流の地で,所有者の方の故郷でもある。そのことから今回公開場所としてこの場所を借りた。
・日本刀発祥の地の舞草として宮城県や岩手県が上げられるが,当時は県自体がないので,おおまかな東北エリアが発祥という考え方をすると良い。
・直刀が主流だった時代,なぞっただけで斬れる東北の曲刀は画期的だった。
・東北の実践重視の刀と都の製鉄技術が合わさって美しく切れ味の良い刀が生まれた。
◆鑑定,手入れについて
・かつての鑑定は人の目での目利きが主流で偽物が作りやすかった。現代では科学技術の発展により年代測定や鉄の産地分析でより正確に鑑定することができるようになった。
・国宝や重要文化財は勝手に研ぐことはできない。研ぐのにも国の許可が必要。
・名刀はその切れ味の鋭さゆえに手入れの際に指先を切ってもすぐには気がつかない。人間に近い切れ味とされる巻き藁も片手で持った刀を振り下ろすだけでスッと切れる。
・所有刀剣は1万1千振ほど。防犯・防災上の観点から各地に分散して保管し,場所等はセキュリティ上非公開。
◆小夜左文字について
・左文字作の刀を年代順に並べると,ある段階から技術が格段に上がっている。
理由として①正宗の弟子になったから,②都の刀に触れ,向上心が高まったからの2説がある。
・命名の由来は諸説あり。一つは歌枕の「小夜の中山」から来ているという説。
歌枕・・・和歌に多く詠み込まれる名所,旧跡。
・もう一つの由来は仇討の話。
浪人だった父の死後,生活のために形見の刀を売りに行こうと静岡の掛川の峠を越える際に盗賊に母の命と刀を奪われた息子が,仇は刀を研ぎに来るだろうと研ぎ師になって機会を窺い,見事仇を討ったという説。
・領地を治めていた山内一豊が所有し,刀コレクターの秀吉に献上,秀吉が自分の身体に合った太閤左文字を手に入れたことから細川家へ褒美として下げ渡され,細川忠興の代に発生した大飢饉の際売却され領民の飢餓を救ったとされる。このことは,2人の命を奪った刀が後にたくさんの人の命を救ったとも言える。
◆所有刀剣の今後の展示予定
【刀剣博物館(東京代々木)】2015年8月25日~11月1日
・波游ぎ兼光(国指定重要美術品・小早川秀秋所持)
・備前長船秀光(最上大業物)
→http://www.touken.or.jp/museum/
【佐野美術館(静岡県三島市)】2015年11月29日~2016年1月24日
・波游ぎ兼光(国指定重要美術品・小早川秀秋所持)
・備前長船秀光(最上大業物)
・熊野三所権現 長光(国宝)
・見返り元重(国指定重要文化財・山形県酒井氏伝来)
・水神切り兼光(国指定重要美術品・上杉家伝来)
→http://www.sanobi.or.jp/exhibition_log/?y=2015
【致道博物館(山形県鶴岡市)】2015年8月22日~9月28日
・見返り元重(国指定重要文化財・山形県酒井氏伝来)
→http://www.chido.jp/contents/6_news.html
※上記は,公開時の解説を聞きながらとったメモにもとづいての記述であり,記憶に頼っている部分もありますことをご了承ください。できる限り情報ソースは明記しております。