フジテレビ。

松本清張生誕100周年。

この前のテレ朝の「警官の血」並みに面白いドラマだった。


舞台は昭和63年、まもなく昭和の終わりが近づいている頃。

定年退職を目前に控えた刑事が(当時の公務員の定年が55歳)定年退職した元銀行マンの失踪者を捜索する過程でその人生と自分を重ね合わせる・・といった内容。


真面目一筋だった銀行マンに実は愛人がいてまじめ=我慢の連続の人生の最後に夢が見れたという人生をゴーギャンの人生とだぶらせて描く。


昭和63年とは、今から約20年昔であり、昭和53年生まれの私は当時10歳だったのだが

つい最近だった小学生時代も、いや、本当に「昔」だなと最近感じる。


作品中では昭和を生き抜いてきた「戦後」まじめひとすじでレールに乗ってきたであろう多くの人(失踪銀行員や刑事)、そんな定年近い刑事の価値観を理解できない若手刑事がでてくるのだが


その若手刑事ってバブル世代なのかな?

泉麻人が書いた女子アナと平成を絡めた軽い小説を読んで感じたことだけど

今の40代?くらいの人たちってたぶんそれまでの「若者」と違った新人類?とか呼ばれてた世代なのか

世相かウキウキしたトレンディドラマ的なものをめざす若者、だったのかもしれないけど


昭和63年当時の寿退社で女の子が売れる、だの不倫の肯定だの、女子行員の制服だの、やはりすごく時代を感じる。男尊女卑というか、女は腰掛OLみたいな扱われ方がセクハラでもなく公然とあった一方で、いわゆるオールドミス・局ババアもいて(その残党がいまや会社ではある意味勝ち組な気もする・・・当時入社の女の人ってパン職腰掛仕事だったとしても、今の若い子より給与体系がよく総合職男より仕事は楽でお金もそこそこもらえているという案外おいしいポジションな気もする、給与切り下げにあっているそれより下の世代から見ると)



また「不倫する娘」を肯定的にとらえる家庭が出てきたというのも、新しい時代になったということを意味しているような気がする。


泉麻人の女子アナを描いた(おそらくフジテレビの河野・有賀・八木の頃)バブル丸出しの小説にもあったようにおめでたい時代というか、経済の頂点に向かっているちゃらちゃらした雰囲気は


先日のフジテレビ報道特番かなんかで新入社員時代の報道記者が日航ジャンボ機墜落事故の取材で途中でいやになっちゃってた(けど最後にスクープ取れたというエピソード)というのでも感じたけど


いまの40代って、なんかそういうところあるなぁと思った。

いろんなことにすぐ甘えるというか、悪い人じゃないんだけど頼れないというか・・根性がないっていうのか。

38歳~45歳くらいの人って、いつまでも若いつもりでいてポジティブなところはある意味うらやましいというか薄いなぁと思うことが多いかも。軽薄なことや流行に乗ることがカッコいいと本人たちは思っているみたいにみえるけど、ほかの世代からみたらそういうところがちっともかっこよくないし、踊らされてるだけのおめでたいアホにみえる。


この40代の世代って、自分にも甘いけど他人にも甘いので、そんなに害はないのでキライではないんだけど

偉そうに自慢話?武勇伝されると(特に就職関連の話や昔話)されるとめでたすぎて失笑する部分はある。

あとその甘さのせいで迷惑かけられる時はイライラするけど。



ちなみに今年の新入社員は就職活動時が就職活動中が採用バブルだったのに卒業頃に景気悪くなっちゃった世代みたいだけど。内定取り消しとか確かに酷い話だけど、それに対して世間が騒いでくれてお金までもらえた人もいたようなのであんまり同情する気もない。

だって私たちの頃って、採用取り消し以前に採用者数自体が絞られていたうえ面接で酷い扱いされてても誰も助けてくれなかった雰囲気だったし。圧迫面接なんつって。全部自己責任とかっていうノリで。

だからそれからみるとずいぶん優遇されてるじゃん・・って思ってしまう。

いま思い出しただけでも圧迫面接ってまじで腹立つね。

暇じゃねーんだよ、そんな茶番に付き合わせんなってかんじ。

社会人になって何年も経つけど、圧迫面接に効果的な意味があるとはまったく思えないな。

だいたい景気良くなったあとは就職活動者や新入社員にめっちゃ甘くしてたじゃん。

面接では誰だって上手く対処するに決まってんだし、わざわざ嫌な思いさせる必要性どこにもないし。

だいたいそんな作られた圧迫やって何がわかるんだよw


割り切って働いていても、いまだにあの頃とその後の企業の態度というか情勢?には

不快感を覚えるね。なんか踊らされた感じ。実力主義だなんだとかいって、当時は何かと厳しいハードルかかげてたくせにその後甘すぎる上の世代や下の世代を目の当たりにして、ばからしくなった。


世代間ギャップはわかりあえないね~。このドラマでも戦後をひたすら努力してきた世代の刑事と高度経済成長で夢いっぱいであほらーと育ってきた若者刑事との対比と「昭和の終わり」がうまーく描かれてた。


若手の刑事には出番は少ないがそんな世代の薄さみたいなものを感じられて面白かった。

ちなみに若手刑事役の大口さんってわりとイケメン・・



渋い役者陣がそろっていた。中でもよしこ役の木村多江さんの犯行告白のシーン。

「男を求めるどうしようもない底辺の女」演技力抜群。くぎづけになった。素晴らしい女優さん。


よし子という役は、いとこ(慶子役 深津)の不倫を幇助してあげていっけん親切なんだけど

ダメ男(内縁の夫 高岡蒼甫)にそそのかされていとこと不倫相手(小塚役 石坂)を殺害しようとする。

ダメ男が8歳年下なので、負い目があって断りきれなかったという。


そしてそんなダメ男と別れたほうがいいと慶子に言われたことがあり

慶子と不倫相手の純愛をみせつけられているような気がして自分がみじめで嫉妬してしまい殺害をOKする。


基本的には慶子を大事ないとこだ思っているのだが、男がからむともうだめ。

ダメな男にすら愛してしまうとすがるどうしようもない弱い女であり、情深いが不幸の典型的な「まともな価値観」がしっかり育ってないタイプの女。


コレと対照的なのが小塚の妻(十朱)のプライドの高いいいとこの育ちの女。

夫に愛人などできるはずもないとどこかで格下にみており、失踪しててもフンとかまえているのだが

実はあんな地味な夫に愛人がいて

その愛人が身分を隠して自宅に訪問していたことを知り

ここではじめて狂乱する。


しかしこれは夫を愛するが故、ではなく自分のプライドが傷ついただけだろう。

格下だと思っていた、飼い犬に手をかまれた思いで「くやしい」のだ。

またぬけぬけと自宅に上がってきた女に何の疑いもなく騙されてた自分が腹立たしく「くやしい」のだ。


ちなみに本作ではよし子の犯行告白でも「くやしい」という台詞がでてくるし

小塚の妻も「くやしい」という台詞を吐く。



さまざまな人物に「対照」があり大変見ごたえのある作品だ。

松本清張の作品はハズレがないので、小説で読んだらこの100倍面白く世界にどっしり引き込まれると思う。

松本清張の作品に流れている一種のじとっとした暗さ・冷酷で本質を突く人物の心理描写は凄い。


このドラマはコレで面白かったが、TBSやテレビ朝日で作ったほうがもうちょっとある種の暗さやじとっとしていてひんやりとした空気も作れたのではないかなぁと思う。

フジテレビの作品って、濃厚感とかじとっとしたものが不得手に見える。

軽い仕上がりになるっていうか。

その軽さも気楽でいいのだが、松本作品の根底まで到達できていない描き方な気もする。