政治とは 情熱と判断力の二つを駆使しながら 堅い板に力をこめてじわっじわっと穴をくり貫いていく作業である。もし、この世の中で不可能事を目指して粘り強くアタックしないようでは およそ可能なことの達成も覚束ないというのは まったく正しく あらゆる歴史上の経験がこれを証明している。しかし これをなしうる人は指導者でなければならない。いや指導者であるだけでなく―はなはだ素朴な意味での―英雄でなければならない。そして指導者や英雄でない場合でも 人はどんな希望の挫折にもめげない堅い意志でいますぐ武装する必要がある。そうでないと いま 可能なことの貫徹もできないであろう。自分が世間に対して捧げようとするものに比べて 現実の世の中が―自分の立場から見て―どんなに愚かであり卑俗であっても 断じて挫けない人間 どんな事態に直面しても《それにもかかわらず(デンノッホ)!》と言い切る自信のある人間。そういう人間だけが政治への《天職(ベルーフ)》を持つ。

(職業としての政治 p.105-106)より



JFケネディー