吹奏楽部の夏合宿は毎年、山の頂上部にある
寺で行われた。
天気がいい日は外で45人による合奏が行われる。
夜間は広い本堂でも合奏するのだが、
合宿最終日には、全員でバーベキューをし、
その後に肝試しが行われる。

肝試しをされるのは1年生2年生部員で、
3年生は脅かす役回りだ。OBは本堂で酒盛りしている。
肝試しに際しては、寺の住職から有難い話がある。
元々その寺は、戦に敗れた落ち武者が追い詰められ
自害した場所と言い伝えられ、その魂を祀るために建立された寺で、
その合宿の数年前には、自殺があり、僕等もそれは知っていた。

そんな有難い話を聞いてから、墓所をめぐり
森を抜けて、細い真っ暗な階段を上って古い祠から
用意されている物を持ち帰るというのがルールだ。
脅かす側の先輩は、すでに墓石の影や大木に上って
僕等下級生を驚かせるためにスタンバイしている。

僕は下級生に言った。「お化けが出たらちゃんと挨拶しろ。」

下級生が一人、また一人と間隔をおいて山道に消える。
「ウオッス!!」第一声が聞こえた。
それを合図にするように、真っ暗な山のあちこちから
「ウオッス!!」「ウオッス!!」「ウオッス!!」
いろんな声の後輩たちの挨拶が響く、響く。
僕はその場で笑い転げていた。

が、当然その報いは僕に戻ってくる。
先輩たちに呼び出されボコボコにされたのは言うまでもない。
が、高校時代最高の楽しい事件であった。

翌年、僕も3年となり脅かす側に回ったのであるが、
脅かされる方よりはるかに怖い。
真っ暗な山の墓石の裏で、
下級生が来るのをじっと待ってる訳だから。
改めてOBとなった先輩に謝ったのは言うまでもない。


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