今週発売された『週刊新潮』(新潮社)の12月27日号の48頁以下で,現在の民法819条が規定する離婚後単独親権制度から,共同親権制度への法改正を求める内容の特集が掲載されています。
平成30年7月15日の読売新聞1面に,「政府が離婚後も「共同親権」を検討している」という内容の記事が掲載されたことの紹介から,記事は始まります。現在の民法が規定する離婚後単独親権制度が,夫婦の間の子の連れ去りを生んでいるとの指摘がされていること。さらに,DV被害者の支援制度が,相手親と子供の関係を絶つための手段として悪用される事例が問題化している,と名古屋地裁の判決が指摘したこと。現在の民法の規定する離婚後単独親権制度の問題点が指摘されています。
もちろん,離婚後共同親権制度に反対される方もいらっしゃいます。その代表的な意見は,相手親が暴力を振るうなどの問題がある場合に,共同親権制度であると子の福祉に反する事態が生じる,という内容です。でも,平成23年の民法改正で,親権行使に問題がある親の親権を停止できる制度が導入されているのです。すると,あえて問題のない親についてまで,子についての共同親権状態を,夫婦関係の解消である離婚を理由として,終了させる必要性は,ないはずです。
さらに申すと,この問題は日本がハーグ条約を批准したことで,よりシリアスなものとなっています。諸外国が離婚後も共同親権制度を採用している中,日本だけが離婚後単独親権制度を採用していることで,日本で離婚した方について,単独親権者となった親による子の連れ去りと相手親からの分離が,法によって容認される結果となっているからです。それは,ハーグ条約の締約国として,到底インターナショナルな人権保障水準とは言えないはずだと思います。
なによりも,本来親の子に対する親権は,「子の福祉と健全な成長のため」にあることを,忘れてはならないと思います。1人の親だけの親権では,濫用が生じ,相手親はそこから子を救うことができない状態が生じます。また,子にとって両方の親と同じように接することで,健全な成長を実現できるのです。共同親権も,面会交流も,いずれも親の権利としての側面と,子の権利としての側面の両方を性質として有するものなのです。
今や,世界中で法律で離婚後単独親権制度を義務付けているのは,日本と北朝鮮だけだそうです。世界中で,夫婦別姓制度を認めていないのは日本だけだと政府は国会の答弁で答えているように,離婚後単独親権制度についても,日本が国際人権保障の国際的水準から置いて行かれてしまっているように思います。
21世紀の現代,日本の社会がどのように子の福祉と健全な成長を図ろうとしているかの姿が,離婚後の親権制度には投影されているように思います。私が担当させている離婚後単独親権制度違憲訴訟も,その法改正が実現される大きなステップとなることを祈っています。