ロボット好きな研究者は人間嫌いの堅物というイメージがあったし、

 実際、その教授もそういう見方をされることが多いみたいではあるが、

 実のところはロボットより人間が好きだから人間そっくりのロボット

 を作っているのだそうだ。

   

 人間のコピーのようなアンドロイドを作って、人の言葉や心、意識、

 アイデンティティーとは何かを理解したいというように仰っていた。

 アンドロイドがどんどん生身の人間に似てくる過程で、

 人間を人間たらしめているものは何か、ということが見えてくるらしい。

 

 ロボットは効率アップ、コスト削減、という経済物質主義において素晴らしい

 側面をクリアするために考え出された点も否定できないとは思う。

 ただ、研究が進むにつれて、そのような即物的なメリットだけでなく、

 人間とはそもそも何かという本質が見えてくるという部分に驚きとともに

 喜びを感じた。

 

 理系的発想のセンスを全く持ち合わせていない私には、ロボット工学は

 医学や薬学よりも縁遠く、脅威にすら感じる存在だった。

 「何十年以内に、今ある職業の○○%は機械にとって代わられます」

 とまことしやかに語られる時代。

 

 数字上での生産性を考えたら、人間に勝ち目はない。

 でも、数字や見た目で判断しづらいところに私たち人間の価値はあるのだ、

 とロボット達は教えてくれるのだろう。

 自ら開発したものに教えを乞うとは、人間の学びは奥深い。

 

 

 つづく。