高校生の頃
『石井ちゃん』
と呼ばれていた
数学の先生がいた
当時でも70歳は超えていそうな
(私学だったので定年退職がないから
なのか不明)
白髪の
眼鏡をかけた
おじいちゃん先生だった
当時の私は
思い出そうとすると
もやがかかってしまう感じで
とにかく辛かった感覚は
覚えているのだが
授業などたったのひとつも
まともに受けていなかった
唯一
石井ちゃんだけが
そんな私のことを
叱責もせず
何か諭す言葉をかけるでもなく
無視をするでもなく
いつも変わらなかった
あるとき
教室の大掃除かなにかで
えらく床をごしごし
奇麗にしていたことがあった
無心でごしごししている私に
「きれいにしてくれているねー」
と
一言声をかけてくれた
石井ちゃんと会話したのは
それぐらいしか覚えがない
私は
石井ちゃんに
どれだけ救われたかわからない
そういう記憶は
とても
自分のなかに根付くものだな
受け取ったものは
やっぱり
還していきたいものだな