全国に緊急事態宣言。
街を歩けばほとんどの人がマスク姿。
家では夫が、取引先の幹部とテレビ会議・・・。
YouTubeではスピリチュアルリーダーが、
地球を癒すためのライブを配信している。
SNSには、給付金10万円に沸き立つ人たち・・・。
・・・。
もうね、
これ、SFですよ。
この世界を生きるなんて、
あなた想像してました?
・・・。
2月25日。
新大阪。21時23分。
最終の新幹線に飛び乗る。
隣のマスク姿の若いビジネスマンは、
背面テーブルの留め具にスマホをひっかけて、
映画か何かを楽しんでいる。
人いきれに淀む車内。
新型コロナウイルスの影響により、
車内販売は休止とのアナウンス。
頭の中は、蹴散らして飛び出てきた部屋のこと、
そして諸々の失敗に対する反省でぐるぐる・・・。
真っ暗な窓の外に富士山は見えない。
新横浜駅に降りた途端、
寒さで、体の芯から震えが止まらない。
小雨の中。
知らない道。
塗れたアスファルトににじむ街の光。
オレンジの光を放つ高い建物。
その前に、傘を差した人影。
午前1時前。
なんとか夫の待つシティホテルへたどり着く。
あの日から1ヶ月半。
私はずっと、架空の世界を漂ってるよう。
あの日私は、
別の世界線へ飛んだのかしら。
晴れた日の日差し。
人が行きかう多摩川の河川敷。
すべてが幻想のよう。
この騒動がおさまるまで、
感染の危険が消えるまで、
両親や兄弟が住む街には帰れない。
・・・。
どう!これ!
完全に小説の導入部分じゃない?
私はこの小説の主人公であり、
読者であり、
ライター(創造主)。
目をそらすなんてもったいない。
みんなで無事にこの物語をくぐりぬけると決めて、
楽しもうと思います。