Tさんと初めてプライベートで会うことになり、私はとても緊張していた。
 
 
ここから先のTさんとのことは
正直、記憶が曖昧で覚えていないことの方が多いのだけど
 
 
一つだけ確かなことは
 
 
この日私は
彼と初めてキスをしたということだ。
 
 
ご飯を食べに行った帰り道
ふいに彼にそっと手で目隠しをされて
キスをされたのだ。
 
 
突然のことで何がなんだかよくわからなかったし
彼が何を考えているのかもわからなかった。
 
 
ただ、私に対しての恋愛感情があるようには感じられなかった。
 
 
彼に悩まされる日々が続いていたわけなのだけど
 
 
そんな私の前に
もう1人気になる存在が現れた。
 
 
それはもう一方の映画館で出会った人だった。
 
 
彼とはシフトが一緒になることが多かったのだけど
 
 
私は、ポップコーンやドリンクなどを販売する売店(映画館ではコンセッションと呼ばれる)担当で
彼は、チケットのもぎりや劇場内の清掃などをするフロア担当だったので
 
 
同じ時間にシフトに入っていたとしても
別々に仕事をしていたのであまり話す機会はなかった。
 
 
オープニングスタッフだったので
劇場がオープンするまでは
別の場所で研修をしていたのだけど
彼はその場所にいつも自転車できていた。
 
 
だから、終わりの時間が一緒だったとしても
一緒に帰れるような機会もなくて
 
 
“よく会う人”という感じだった。
 
 
そんな時、バイト内で
野球好きな人を集めて野球部を作ろう
という話が持ち上がっていた。
 
 
監督はフロアのHくんがやるから
入りたい人はHくんに直接連絡してくれとのことだった。
 
 
私は最初
Hという人が誰だか分からなかったのだけど
 
 
途中で
確かあの人の名前もHだったような、、?と
思い始めた。
 
 
もともと野球が好きで
野球部自体に興味があったということもあって
私は思い切ってHくんに連絡をしてみることにした。
 
 
私:「もしかして、研修の時いつも自転車で来てる人ですか?
   野球部に興味あって連絡しました!」
彼:「はい!研修の時いつも自転車で来てる人です!笑
   野球部ぜひ入ってよ!マネージャー絶賛募集中!!」
私:「やっぱり!!笑 マネージャー是非やりたいです!」
 
 
この日をきっかけに
私は彼とよく連絡を取り合うようになった。
 
 
Tさんのことが気になりつつも
Hくんのことも同時に気になり始めていた私であったが
 
 
このあと
思いもよらない事件が起きることになるとは
この時はまだ知る由もなかった。