付き合うことになってからずっと

彼は私のことを誰よりも愛してくれていたし

大切にしてくれていた。


嬉しい時も、楽しい時も

悲しい時も、辛い時も、苦しい時も

 

 

私の側にはいつも彼がいてくれて

彼以外の人は考えられないと思っていたし

この恋は永遠だと思っていた。


でも

怒鳴られたあの日の出来事がきっかけで

私の中の何かが変わってしまった。


元を辿れば

彼のせいでこんなことが起きてしまったのではないか。

 


もともと私は

付き合っていることを公にはしたくなかったし

人前でベタベタするのも好きではなかった。

 

 

見せびらかすような恋愛はしたくなかったのだ。


彼が部活で忙しい頃は

なかなか2人の時間を作ることができなくて

私自身寂しい思いをしたことはたくさんあったけど

 

 

会えなくて寂しい時間があるくらいが

私にはむしろちょうど良かった。


私と彼は一緒に居すぎたのだ。

 


もっと適度な距離感を保っていれば

こんなふうに周りのみんなに不快感を与えることもなかったし

私がみんなの前で怒鳴られて人間不信になることもなかったと。


彼にはこれまでたくさん助けてもらったのに、支えてもらったのに

こんな考え方しかできなくなってしまった自分がとても憎かった。


考えれば考えるほど彼を恨んでしまいそうで

嫌いになってしまいそうで怖かった。


彼に申し訳なさすぎて

私は本気で別れたいと思うようになっていたけど

 


唯一心から信頼できる彼をここで切り捨ててしまえば、彼を失えば

私は本当のひとりぼっちになってしまうかもしれない

という不安に駆られていた。

 


そう思ったら怖くなって

別れを切り出すことさえできなかった。

 

 

もうこれ以上波風を立てるようなこともしたくなかったし

今別れることはベストではないと

その時は判断した。

 

 

私は

高校を卒業するまでは

彼との付き合いを続けることに決めた。

 

 

あんなに大好きでいたのに

気づけば”好き”という感情はもはやなくなっていて

 

 

付き合い続けることを決めたものの

彼に対する私の態度は実に酷いものだった。

 

 

彼は私のわがままをなんでも聞いてくれた。

 

 

大学受験本番を間近に

「一人で受験会場に行くのが心細いから、一緒についてきて欲しい」

と言ったら

全部の受験日についてきてくれたし、迎えにも来てくれた。

 

 

「ごめん。明日は俺も第一志望校の受験があるから難しいかもしれない」

と言われた日も

私が拗ねて文句を言ったら

「わかった、行くよ」と

半ば諦めモードではあったけど、ちゃんと来てくれた。

 

 

私が彼の受験日に付き添ったことは1日としてなかったのだけど、、

 

 

「ねえ、あの本が欲しい!」

「あのDVDが欲しい!」

と言ったら、すぐに買ってきてくれた。

 

 

せっかく買ってきてくれたのに

1度見終わったら最後

「もう見ないから〇〇(彼)の家に置いといて!」

と、私は言った。

 

 

彼氏というより

まるで召使いのようだった。

 

 

何を言おう

私がそうさせてしまったのだけど。

 

 

こんなことをしていたらとっくに愛想をつかされてもいいはずなのに

彼は文句ひとつ言わず

私の望みを全て叶えようとしてくれていたし

ずっと側にいてくれた。

 

 

彼ほど優しい人は

後にも先にもいないだろうなと思う。

 

 

けれど私は

彼が優しくしてくれればしてくれるほど苦しかった。

 

 

なんてわがままな女なんだろう

と自分でも思う。

 

 

今思い返してみると

度を越した私のわがままは

こんな酷い女のことなんて早く嫌いになって欲しいと思ってのことだったのかもしれない。

 

 

けれど

私のそんな思いは

真っ直ぐすぎる彼には全く伝わらなかった。

 

 

卒業式。

 

 

彼と一緒に写真を撮る約束をしていたけど

私は他の友だちと写真を撮ることを優先して

彼を後回しにしていた。

 

 

彼を避けていたのだ。

 

 

体育祭の日

彼にお姫様抱っこをしてもらって撮った写真があった。

 

 

彼は卒業式でもそれをやりたいと言っていた。

 

 

けれど私は

彼のことがもう好きではなかったのでやりたくなかった。

 

 

避けて逃げ回っていたら

彼がイライラし始めてしまったので

私は仕方なく彼の元へと行った。

 

 

結局お姫様抱っこは拒み

渋々撮った彼との一枚は

お互い微妙な表情をしていた。

 

 

こんな状態だったから

卒業するまでは、、と決めていた私の決意が揺らぐことはなかった。

 

 

卒業してすぐのことだっただろうか。

 

 

私は彼に

「友達に戻りたい」と伝えた。

 

 

もちろん彼からは

「考え直して欲しい」と言われたし

「嫌なところは直すから」とも言われたけど

 

 

一緒に居すぎて疲れてしまったから

少し距離を置きたいと伝えた。

 

 

彼は、私を待つと言って

友達に戻ることを了承してくれた。

 

 

だけど

彼と一緒に居すぎたせいで

離れた瞬間ものすごい寂しさがこみ上げてきてしまって

 

 

情すら湧いてきてしまった私は

たった8日間で彼とよりを戻すことになった。

 

 

よりを戻すことになってすぐの間は

改めてお互いの存在の大切さを実感しあって

”もう絶対に離れない!”

なんて言っていたけど

そんな日々も長くは続かなかった。