前回までで,大アルカナの解説は終わりました。

 今回と次回とで小アルカナの解説をやっていきます。

 

 小アルカナとは,棒・杯・コイン・剣の4スートに番号札1~10,人物札(ペイジ・ナイト・クイーン・キング)を加えたもので,トランプのようなカードです。

 

 大アルカナとは別個に成立したものであると,「タロットの歴史」の著者は述べています。

 

 

 トランプ・小アルカナの原型は,だいぶ古く,紀元50年ころの中国まで遡れるそうです。

 現存するもので小アルカナの直接の原型となっているものは,トルコ・イスタンブールのトプカプ宮殿博物館に保管されている,推定1400年~1500年代の手書きトランプ『マムルーク朝パック』があげられます。

 これも,貨幣・杯・棒・剣の4スートに1~10までの数字札と4枚の人物札が揃っており,小アルカナの形式をもう揃えていたことがわかります。

 

 ちなみに,貨幣・杯・棒・剣の構成をラテン式スートといい,現代のトランプ(ハート・ダイヤ・クラブ・スペード)をフランス式スートといいます。

 

 タロットに対する社会的な受け止めですが,1400年代には既に聖職者側が賭博の一環としてトランプやサイコロゲームとともにタロットも批判の的にしています

 この頃の小アルカナタロットは,ナイビと呼ばれるゲームに用いられ,やっぱり貨幣・杯・棒・剣の4スートで構成されていました。

 1425年,フランチェスコ会の説教師,ベルナルディーノ・ダ・シエナがナイビを『悪魔の聖務日課書』として激しく糾弾したことが記録されています。

 曰く,棍棒は狂人,杯は酒場の常連,貨幣は守銭奴,剣は殺人を表し,キングとクイーンはごろつきの支配者である,と。

 

 

 人物札のキング・クイーン・ナイト・ペイジは,中世身分制を表したものになっています。

 特にペイジは小姓と言われ,王様やお妃様の身の回りに控え,給仕や日常の雑事をこなす役割を負っていました。

 彼らは見習い騎士であり,成人になると君主と契約を交わし,ナイトとして軍務に付きます

 

 

 このように小アルカナは,スートと数・人物の組み合わせとしてカードゲームに使われていましたが,そのカードの意味付けを整理したのは20世紀のオカルティストたちでした。

 

 次回は,小アルカナの札に込められた意味などを紹介して「タロットの歴史」の読書メモを終わりたいと思います。