今回は,第21番目のアルカナ,「世界」をご紹介します。
【正位置】
・ 成就,完成,完全,総合,完遂,完璧,攻略,
優勝,パーフェクト,コングラチュレーションズ,
グッドエンディング,完全制覇,完全攻略,
正確無比,永遠不滅
【逆位置】
・ 衰退,堕落,低迷,未完成,臨界点,
調和の崩壊
【ヴィスコンティ版の世界】
ヴィスコンティ版の世界は,右手にラッパ,左手に小さな冠を持ち,球体で表された世界の上に君臨する様子が描かれています。
この女性は,特に「タロットの歴史」では解説されていませんが,キリスト教における七美徳の擬人化されたものでしょうか。
他のアルカナと異なり,世界にはキリスト教色がそれほど反映されていないためか,同時代におけるタロットでも,世界の構図は様々なバリエーションがあります。
1つは,宇宙全体を卵に見立てた宇宙卵のモチーフで,ヴィスコンティ版の世界も「球形」の中に世界が描かれているところは宇宙卵のモチーフに近いような気がします。
もう1つは,世界を大男が背中に背負っているモチーフで,これはギリシア神話のアトラスから題材をとっていると思われます。
本記事ではキャリー・イェール・パックの世界を紹介していますが,ベルガモ・パックでは2人の裸童が世界を下から支えている図像となっています。
【マルセイユ版の世界】
マルセイユ版は,リースの真ん中に女神が舞い,四隅には四聖獣(鷲・獅子・牡牛・天使)があしらわれている,キリスト教色の強い構図になっていますね。
【ウェイト版の世界】
ウェイト版も,マルセイユ版の構図を基本的には引き継いでいます。
ウェイトが「世界」をどう受け止めていたのか,著書「タロットの歴史」から該当箇所を引用します。
ウェイトによれば,このアルカナは,「宇宙の完全性と終わり,宇宙の神秘,神の中に宇宙の理解を見出した時の歓喜」を象徴したもの。これは,あくまでも人間の内面の反映であり,魂の図像なのです。(引用終わり)
ということで,私なりの理解でいえば,世界は人間の内面に発生するものである,ということになりましょうか。
私達は,自己認識も含め,感覚器官で受容した情報をもとに,意識の中に世界を構築していく,そのような存在なのだと思います。
そういった意味で,外界にある世界そのものと内面世界に生成される世界とでは別物なのでしょう。
このあたりはカント哲学の影響が見て取れます。
リースには上下に結び目があり2本の縄で1つの円環を作っていることが示されています。
また,リースの中央に描かれた女神の両手にも日本のバトンが握られています。
世界が2つの異なる概念(陰陽・善悪など)により形作られており,その調和が完成したときに初めて世界が安定することの暗示となっております。