今回は,第18のアルカナ,月をご紹介します。
タロットカードの意味は以下のとおりです。
【正位置】
・ 不安定,幻惑,現実逃避,潜在する危険,
欺瞞,幻滅,猶予ない選択,踏んだり蹴ったり,
洗脳,トラウマ,フラッシュバック
【逆位置】
・ 失敗にならない過ち,過去からの脱却,
徐々に好転,(漠然とした)未来への希望,
優れた直感
これまでも,何度かふれましたが,月は女性性/陰性/潜在性(無意識)を象徴しました。
太陽が男性性/陽性/顕在性(表に表れ出る才覚)を象徴するのとペアで用いられます。
【ヴィスコンティ版の月】
ヴィスコンティ版の月は,右手に三日月と左手に紐?を持っているのが特徴です。
左手に持っているのは紐ではなく,壊れた弓ではないかとの指摘もあり,個人的には後者だと考えています。
弓は,月の女神アルテミスのアトリビュートです。
ヴィスコンティ・スフォルツァ一家も,他の諸侯と同様に,占星術師を召し抱えており,天文学的な知見を政治や子弟の教育に取り入れていたようです。
イタリアでは,1200年頃から大学が開設されており,最初は「教会法」「世俗法」「医学」の3分野を教えていましたが,のちに「修辞法」「哲学」「天文学」が加わり,この天文学教授には占星術師が採用されました。
当時は,催事の日取りや病気・災害の予兆検出と対策,傭兵隊長の出陣日時決定など,国家の大事を決めるのに占星術が用いられました。
ローマ教皇ですら,枢機卿会議の開催日時を星の配置に従い決定していたそうです。
【マルセイユ版の月】
マルセイユ版になると,月の女神はいなくなり,かわりに人の顔があしらわれた三日月と二匹の犬,湖の中にはザリガニが描かれます。
ザリガニは,生臭い下等生物として,旧約聖書では邪悪と罪の具現化・悪魔のシンボルになっています。
その一方で,脱皮により甲羅が更新されることから復活のシンボルとされ,極稀にイエスに結びつけて語られることもありました。
また,ザリガニは目的もなく前後に動くことから「不安定の擬人像」のアトリビュートに用いられました。
西洋占星術では,蟹座の守護星が月であることも,月のタロットにザリガニが登場している要因だと考えられます。
【ウェイト版の月】
ウェイト版の月も,マルセイユ版と同じ構図ですね。
ウェイト版の月は,満ち欠けを強調しており,また光の波長も長短交互に描かれています。
太陽と異なり,日々変わる形や光の強さを踏まえ,古代より人々は月から不吉な暗示を受け取ってきました。
狂気(ルナティック)は,ラテン語の月(ルナ)が語源であり,月は人を狂わせると考えられてきたのです。
月の下には,犬と狼が1匹づつ佇んでいます。
人間の伴侶としてのポジションを確保した犬に対し,狼は野生の象徴として描かれています。
狼から犬への進化は,古い意識を脱ぎ捨てることの象徴でもあります。