今日は,第10のアルカナ,「運命の輪」をご紹介します。

 

 タロットカード『運命の輪』の意味は以下の通り。

 

【正位置】

・ 転換点,幸運の到来,チャンス,変化,結果,

 出会い,解決,定められた運命,結束

 

【逆位置】

・ 情勢の急激な悪化,別れ,すれ違い,降格,

 アクシデントの到来,解放

 

 まさに,運命のめぐり合わせの運・不運を体現したカードですね。

 

 

 運命の象徴としては「糸(糸車)」があります。

 ギリシア神話では,運命の糸を紡ぐクロートー,その糸の長さを測るラケシス,最後にその糸を断ち切るアトロポスの3女神が登場します。

 日本においても「運命の赤い糸」なる表現が見られますよね。

 

 

 

【ヴィスコンティ版の運命の輪】

(画像はWikipediaより拝借)

 

 

 ヴィスコンティ版の構図は,中央の輪を回す目隠しされた運命の女神と,それを支えるかのような貧しい老人,頂上には威風堂々と構えた女性,輪の左側にはこれから上昇しようと頂上を伺う人物,右側には頂上から滑り落ちるような格好の人物が描かれております。

 

 このカードはベルガモ・パックなので,頂上の女性はヴィスコンティ家のビアンカをモデルにしているでしょうか。

 

 このカードの登場人物の口元にはセリフが書かれており,それぞれ,

 

頂上:私は統治する

下部:私は統治しない

左側:私が統治するでしょう

右側:私が統治した

 

 と,あります。

 

 

 中央の運命の女神が目隠ししているのは,運命は気まぐれであることの象徴であるとする見方と,運命には感情の入り込む余地のない冷徹なものであることの象徴であるとする見方があります。

 

 

 

【マルセイユ版の運命の輪】

(画像はこちらのサイト様より拝借)

 

 

 マルセイユ版の運命の輪は,木製の二本の足がついていますが,これは当時用いられていた拷問道具を描いています。

 そしてこの環にしがみついているのは猿と犬といった動物で,これは理性を持った人間の対極の存在として描かれています。運命の悪戯で突如悲劇(あるいは幸運)に遭遇すると,人は理性をかなぐり捨て野蛮性を表出させる,そのようなことを暗示しているのでしょう。

 

 頂上には,剣を持ったスフィンクスが鎮座し,運命の輪を廻し,そこから落伍したものを残酷に処刑する,そのような人生の無常を表しているかのようです。

 

 運命の輪が水上に浮いているのは,この運命の輪が船の舵をも意味していることの暗示です。

 「運命の輪」は,一寸先は闇の人生を表していますが,同時に,運命は舵を握り操舵することも可能であることを示唆しているのではないでしょうか。

 

 

【ウェイト版の運命の輪】

(画像はWikipediaより拝借)

 

 

 ウェイト版の運命の輪には,四隅に鷲・天使・牡牛・獅子の四聖獣が描かれています。

 四聖獣はもともとエジプト神話の天空神ホルスの4人の息子(ハヤブサ・ジャッカル・サル・人間の頭を持つ神)がモデルとなっています。

 これがギリシアに入ると火・地・風・水の象徴とされ,またキリスト教世界ではマルコ・マタイ・ルカ・ヨハネの四福音史家を表すものと考えられました。

 

 ちなみに,日本の稲荷神社の眷属はキツネですが,この神様もインドの荼枳尼天がモチーフとなっています。

 この荼枳尼という女神は人肉を食らうと言われ,ジャッカル・狼に化けると言われています。

 意外と中東・エジプトの信仰が日本まで脈々とつながっているのかもしれません。

 

 輪の中央には,ラテン語で「輪」を意味するROTAと,ヘブライ語でヤハウェと書かれており,この運命の輪が神の力により回っていることを示しています。