続きを読みましょう。
今読んでいるところはペストによる被害があまりにも生々しく書かれており,紹介できるような記事がないですね。
それにしても,いまの世界で起きていることと全く同じことが1665年のロンドンでも起こっていました。ぜひ皆さんも本書を購入いただき読んでみてください。これは,予言の書といっても過言じゃないです。
ロンドン市を襲った悲劇の中でも,特に妊婦にまつわるものは悲惨そのものです。
お産間近にペストにかかり,産婆さんも女中も近所の奥方にもお産を手伝ってもらうことができず,母子ともになくなるケースが多々記載されています。
肉親の死で気が狂う人も多数おりました。
・・・ 中でも,ある一人の男なぞは,あまりに強烈な衝撃を心に受けたために,しだいしだいに首から上が胴体の中に,つまり左右の両方の中間にめり込んでしまい,最後には頭の脳天のところが両肩の骨の陰に隠れてほとんど見えなくなったという話も伝わっている。なんでも一日一日と声が出なくなるばかりか正気もなくなっていき,顔はただうつ伏せになるばかりで,しまいには鎖骨のところにくっついてしまい,誰か他人が側にいて両手で支えてやらないとどうにもならないというありさまであった。
本当にこんな事が人間に起こりうるのでしょうか? これじゃまるでジャミラですね・・・。
ウルトラマンのジャミラは水のない惑星に取り残された人間がその環境に適応してあの姿になったわけですが,あれも人間社会に捨てられた人間の成れの果て・・・。あのフォルムは外部環境等の強いストレスを受けた人間の末路なのでしょうか。
1665年にロンドンを襲ったペストは,はじめ市の西部で犠牲者を出し,徐々に東に移動していきました。西地区でペストが猛威を奮っていた時の東地区の人々はどうしていたのでしょう?
初めてひやっと心配したのが12月のことで,・・・ しかし,いつも心配したといってもほんの当座だけのことに過ぎなかった。・・・ たとえ週に3000人以上の死亡者がその方面(※ロンドン市西部)で出るようになっても,なおレッドリフ,ウォピング,ラトクリフ,およびサザク地方の人々は,病気なんか来るものか,来たところでこちら方面では大したことなんかあるもんか,といった調子であった。なかには,ピッチやタールの臭気とか,石油,樹脂,硫黄といった船の仕事に関係したあらゆる商売に用いられる品物の臭気とかが,結構予防薬として役立ち,これさえあれば命に別条はないと思いこんでいた人もいた。
この後,東地区は西地区を上回る犠牲者を出します。
これも,現代のコロナ感染の経緯と似ています。はじめ武漢で感染が始まった時は,中国国内の問題と捉え,対岸の火事を見るような空気感だったと思います。中国共産党との付き合いの長い台湾はさすがです,怪しげな肺炎の流行がネットに流れるや,すぐさま国境を閉じました,中国共産党の出す情報を信じていないからです。
このときの対応で最もまずかったのはヨーロッパだったでしょう。無防備だった。日本がクラスター潰しを始めていた頃,ベネツィアはカーニバル真っ只中でたくさんの中国人観光客がイタリアに入国していました。当時のニュースからは,全くといっていいほど危機感が感じられませんでしたね。過去のペストだって,結局は東アジア発症だったのですが,なぜ現代ヨーロッパで同様の感染爆発が起こらないと思ったのでしょうか。
日本も,2月末くらいまではかなりのんびりしていたように見受けられます。大方の人は,北イタリアのロックダウンのニュースをみて,「そこまでやるか?」と初めて危機的な状況に気づいたというのが実態だったのではないかと思います。そういう私も全くこんなひどい状況になるなんて思っていませんでしたが,春節で来日する中国人がマスクを買い占めるだろうとの予想はあたってましたね,花粉症対策用のマスクを1月末に買いだめしたため,市中からマスクが払底したときもなんとか保たせることができました。私が花粉症でなければおそらくマスクの買いだめはしなかったでしょう,私ものんびりしていた人間の一人でした。
本書が予言の書であれば,最初の流行で被害が発生していない警戒感の緩んだ地域が,第二波で大損害を受ける,ということになります。日本や韓国,台湾などの東アジア地域が危ない気がします。
この当時のロンドンではペットも受難の時代でした。ロンドン市当局は,犬や猫がペスト菌のキャリアーになるとして,全頭殺処分するよう指示しています。このときに犬は4万匹,猫は20万匹が殺処分されたと書かれています。猫などは,ペスト菌の保持者たるネズミを食うので,かえってたくさん増やした方がよいのではないかと思うのですが,どうなんでしょうか。