最近、ねえちゃん、変だよなあ。
うんうん。
掃除してても、洗濯してても、目がキラキラしちゃって。
テストで悪い点取っても怒らないし。
「そりゃあ、おまえ、ねえちゃんもお年頃ってことよ」
芽キャベツ50兄弟で、一番おませな子が言いました。
「横綱・かぼちゃ山のことで、頭がいっぱいなのさ」
「ねえちゃんの、かぼちゃ山ファンは、今に始まったことじゃないじゃないか」
「ふふ、わかってないなあ。この前、初めてあって、ファンから恋人になったのさ」
「恋人!?」
「そりゃあ、ねえちゃんはオレたちのかあちゃんじゃないからな。もし、横綱がねえちゃんを好きになれば、お嫁に行くってことになるかもしれないよな」
ねえちゃん・・・・・・
いやだ!!
ねえちゃんがお嫁に行くなんて
オレたちを置いて、横綱と結婚するなんて
じゃあ、オレたちはどうでもいいのかよ
ねえちゃん・・・、
「ねえちゃん!」
キラキラした顔・・・・・・。
嬉しそうで、うきうきして、きれいで・・・・・
ねえちゃんなんか、きらいだ!
オレは、家を飛び出した。
裏切られた気がした。
もう、家になんか帰らない
陽が落ちて、とっぷり暗くなっても帰りたくなかった。
どれくらい時間がたったのか、オレは公園でそのまま眠ってしまった。
それから、真夜中ごろに、ねえちゃんに見つかった。
すごくものものしい声がして、大変なことになっているのがわかった。
今頃になって、自分のしたことがやりすぎな事だと痛烈に感じた。
「こんな所で、何してるんだい!」
雷のようなねえちゃんの声。真っ赤な目。
叩かれる!
反射的に身をすくませると、ねえちゃんは、叩くかわりにオレを抱きしめて大声で泣き出した。
「この子は、この子は」
オレが、近所迷惑になるんじゃないかと心配になるくらい、わあわあ泣いた。
ねえちゃん。ごめん。
ほんとに、ごめん・・・。
いつものように、忙しい朝が来た。
ねえちゃんはオレたち50人兄弟の朝ご飯を支度しながら「早く食べて学校行きな」とせわしなく動いている。
ドアを開けて、オレは言った。
「あのさあ、オレ、いいよ」
「えっ?なにが?」
「・・・・兄貴が横綱なんて、ちょっとカッコイイじゃん」
ねえちゃんはきょとんとすると、赤くなって「こらーっ」と言った。
さあ、今日もホームラン、打つぞ!
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