目を覚ますとすぐ隣に彼がいた。
無防備に晒されている寝顔に手が伸びて、触れる寸前で止めた。
 
恋人だったら、抱き合って眠ったり、寝顔にキスをしたって問題ないだろう。
でも俺たちは恋人じゃない。
 
 
 
 
 
……恋人じゃないのに、何してんだって話だけど。
 
 
 
 
 
最初はそんなつもりはなかった。
思わずキスはしてしまったけど、抱きしめてそれで終わるつもりだった。
でも、離せなくて止められなくなって気付いたら組み敷いていた。
それでも、優しくしたいと思っていたのに、身体に残っていた痕跡を見たら止められなくなって、最後は相当無理をさせたと思う。
 
昨日のことを思い返していたら熱がぶり返してきそうで急いで起き上がると、その勢いでタオルケットが捲れて彼の肌が露わになった。
彼の真っ白な肌のあちこちに自分が付けた赤い痕があって、俺は絶望的な気持ちになった。
これは後で張り倒されても文句は言えない。
自己嫌悪に頭を抱えていると、「さみーよ」と潤にタオルケットを取られた。
 
「……おはよ」
「…………はよ」
 
寝起きだからかいつもよりも柔らかい目をしていて、不覚にもかわいいと思ってしまった。
マジで末期だ。こんなんでこれから先も友達できるんだろうか。
 
「……いろいろごめん」
「ホントだよ。いてーんだよ。加減考えろよバカ」
「え?まだ痛いの?」
「痛いんだよこっちは!動けねえからメシ買ってきて。腹減ったから早く」
「ああわかった。ごめん」
 
急いでベッドから出ようとしたら彼に腕を引っ張られた。
 
「お前さ、いつもあんな感じで抱いてんの?だから女と続かないんじゃないの?」
「はあ?!」
「ははっ。図星か」
「ちげーよ!全部俺から振ってんの!!」
「わかったわかった。わかったから早くメシ!」
「……っ、この野郎……」
 
潤はまだ笑いを噛み殺している。
俺は適当に着替えて床に散らばっていた彼の服をベッドに投げつけて部屋を出た。

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

 
 
 
 
 
あれから1週間ほど経って、彼が引っ越しをすることにしたから次の家を決めるまでここにいていいかと相談してきた。俺の答えはもちろんイエスだ。
荷物を取りに一度戻った時に何かあったのかもしれない。そこにはもう住めないと判断したんだろう。
俺としては別にこのまま住み着いてくれても問題なかった。うちは学生にしては贅沢な広さでルームシェアもできるくらいの部屋だったし、家事が壊滅的にできない自分にとって彼の存在は有り難かった。
家賃を半分払うときかない彼に、1/4でいいから家事多めにやってと口約束を取り付け、本格的に一緒に住むことになった。
 
それでも、俺たちの関係は相変わらずだった。
ライブハウスにもクラブにも一緒に行ったし、彼のバイト先の対バンにも1回出て、バンドのメンバーとの飲み会には2回来てくれた。
彼がバイト先のツテで手に入れてくれたミスチルのコンサートにも行った。感動して思わず泣いてしまって隣を見たら彼も泣いていて、その日はそのままカラオケに行って朝までミスチルを歌った。
家でも居酒屋でもレコード喫茶でも、好きな音楽の話とライブやコンサートの構成の話と俺のバンドの話を永遠としていた。
 




「あの日」の話は、ふたりともしなかった。
どんなに酔っ払ってもキスひとつすることはなかった。
 
 
 
 
 
友達なんだから当たり前のことだ。
 
「あの日」が例外だっただけ。
 
 
 
 
 
もう何も残っていない彼の白い首筋を見るたび、『あの日のことはもう忘れろよ』と言われている気がした。
 
 
 
 
 
 
 









みなさん、この展開についてこられてますか?笑
今回の話はいつも以上に好き勝手書いているので、私はとても楽しんでいます爆笑
これでいい!!という方は最後までお付き合いください♡

ソユ