先週の日曜日は、久しぶりに映画館に行ってきました。
少し前は、1日に3本とかざらで、毎週末のように映画館に通っていたのですが、最近はさっぱり。
時間がなかったていう言い訳と、huluに契約しちゃったっていう言い訳を自分の中で繰り返しながら、なんとなく「久しぶりでごめんよ」と謝りつつ、行ってきました映画館。
銀座にあるお気に入りの映画館は、座席とスクリーンの雰囲気がどこか懐かしく、幼い頃に母親に連れられていった今はなき地元の映画館を思い起こさせてくれます。
映画を観ること自体は、それこそ今の時代、どこでもできることです。
ツタヤで借りてきて家で見てもよし。パソコンで見てもよし。最近は家のレコーダに撮りためた映画を外出先のスマホから見るなんで技術も普及しつつあります。
手軽に、映画。
もちろん大賛成です。
でもね。やっぱり、映画は映画館で観るにかぎると思うのです。
「映画を観る」ときは、どこからがスタートだと思いますか。
本編が始まったときでしょうか。
予告が始まったときでしょうか。
私は、家を出るときからがもうスタートだと思うのです。
映画を観にいこうと思い立って、
なにを観ようかと考えて、
映画館について、
なにを観ようかを選んで、
チケットを買って、
もぎりの人にチケットを渡して
半券を受け取って、
お土産コーナーをひやかして、
次回上演作品のチラシを眺めて、
時間になったら席について、
周りのヒソヒソ声にまどろんで、
座席の匂ひに心を落ち着かせて、
開演のブザーに気持ちを高ぶらせて、
そして、そして、やっと待ちに待った、
本編を観る。
エンドロールの間、
終わってしまった名残惜しさをたっぷり感じる。
明るくなった館内で
興奮したおしゃべりの中、余韻を楽しむ。
最後の一人になった後、席を立つ。
空になった座席のポップコーンのかすに
人々の興奮の跡をみる。
スタッフの「ありがとうございました」に、
「こちらこそ素敵な映画をありがとう」と心で返す。
映画館の外に出て町の喧騒に自分をならす。
現実に自分を引き戻す。
映画館に入る前と後の自分を比較してみる。
少し変わった日もあれば、てんで変化なんか感じない日もある。
家路につく。
時にはカフェによって、さらに余韻を楽しむときもある。
良い映画に出会えた感謝を胸に眠りにつく。
これが、「映画を観る」ことだと私は思うのです。
すべてまとめて、映画を楽しむことだと思うのです。
本編だけでなく、映画を観ること、観に行くこと自体をすべて楽しむ。言い換えると「映画を観る」行動に関わるすべての行動を丁寧に噛み締めて楽しむ。それが、味わうことだと私は思うのです。
少し前の話ですが、音響ライターさんとお仕事したことがありました。オーディオ機器専門のライターさん。音楽を演るのも聴くのもとても好きなその方がこんなことをおっしゃっていました。
「音楽好きは、音楽を聴く、その瞬間だけを楽しんでいるのではないんです。音楽を聴こうと思って、かけるCDを選んで、オーディオの電源を入れて、CDをセットして、CDがオーディオに吸い込まれていく音を楽しんで、スタートボタンを押して、CDが回り始める音を楽しんで、そして、やっとやっと始まる音楽を愛して、音楽があるその空間を愛して、その時間を愛して感謝するんです。これが、音楽を楽しむことなんです。」
音楽でも、映画でも同じ。
そして、写真でも同じ。
きっとサッカーでもダンスでも同じ。
そして、きっと、生きることも、同じ。
瞬間、瞬間、そのすべての行為を丁寧に愛でて生きる。
そんな風に生きられたら幸せだと思うのです。
そんな風に生きたいと思うのです。
そして、そんな風に旅をしていきたいと思うのです。
カイワレ。