「男同士の恋愛」
私、男でした。
いや、今も男か。
でももう凸はないな。
染色体は男性だったな。
でも精神的にはどうなんだ。
戸籍はもう女だな。
でも染色体男性のままだし。
そういうこと考えだすと日が暮れるから、
一応、
「私は男でした。まぁ今はよくわからんです」
ってことにしておく。
私の脳内を皆様にお見せするわけにはいかないんで、
「心は女なの!だから手術して生まれ変わって女になりました!」
って声高に叫ぶのも、自分的にどうなのかなと。
あんどう蒼をみなさまにそのまんま差し出して、どうぞそちら様でご自由にってなもんよ。
で。
数ヶ月前。
私の超友達モトちんが、
「今度こういう内容の本を作ろうと思うから意見欲しい」
って相談してきた。
いわゆるBL(ボーイズラブ)の写真集。
men's eggのカリスマモデル、佐藤歩君 と田中大地君 、二人でいくってことだった。
「ボーイズラブかぁ…」
正直私にとっては超微妙な世界。
なんたって、中学・高校・大学と、見かけも男性だった私は、「ボーイズラブ」をリアルで経験してきたからさ。
なんとなくあの時代のことを思い出すと、モヤモヤっとする。
このモヤモヤをどう表現していいかわからないんで、正直に、
「確かに今ってBL流行ってるけど、それを写真集って形で表現するには難しいと思う。モヤモヤな世界だし」
って言った。
「モヤモヤ?」
「そう、モヤモヤ。なんともいえないモヤーッとした感情が。」
「へー。そういうもんなの?」
「うん」
リアルボーイズラブの私の説明では彼にわかりっこない。
モトちんは女性を愛する「普通の」男性であるし。
でもまぁ、アドバイスとかできることはやった。
正直そんなに期待はしてなかった。
友達の作った本ってことで、ここからは宣伝クサいかもしんないけど、できれば最後まで読んで欲しい。
とうとうモトちんが出来上がった本を持ってきた。
表紙写真は私が口出しした通りにおさまってる。
やっぱ若い子だと絵になるねー
なんて。
中を見ていったんだけど。
歩君と大地君がBLの世界を綺麗に表現してる。
細部まで趣向を凝らしてるなぁって感心しながらページを繰っていた私は、
ある写真に脳天をガンと殴られた。
それは歩君と大地君が、ビルの屋上ベンチに並んで座り普通に笑ってる、
って。他愛の無い日常風景なんだけど。
その写真を見た瞬間、
男の体で男を好きだった季節、
彼ごしに見たたくさんの風景、
縮めてはいけない距離、
自分の性、生、声。
そう、声に出して言えなかった思い、「好き」。
ただの友達として笑っていたこと。
すべてがリアルな映像、匂い、感触…五感と共にぶわっと蘇った。
びっくりした。
写真の二人によって開かれた扉から、私は一冊の「妄想世界」を旅させてもらった。
そこでは、歩君と大地君がただ優しくしあって、家族も社会も何も関係ない二人だけの世界を生きていた。
写真集を閉じた私は、ちょびっと涙ぐんでたかも。
最高に気に入ったのは、本編最後のページ。二人が自然に大笑いしてる写真。
なぜかすんごく安心した。
私は、
「良かったよー良かったよー」
と、モトちんにしつこく言い続けた。
その日は美味しいお酒が飲めたよ、ホント。
是非一度手に取って欲しい。
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私はボーイズラブの世界を特別好きなわけではないし、これからもそうだと思う。
ずっとモヤモヤしたものを感じ続けていく。
それは、
「男女の恋愛への憧れ。叶えられなかった夢への祈り」
なんだろうか。
もし、彼が自分を愛してくれたなら。
いつまでも、彼と年を取っていけたのなら。
男の私は日々、妄想していた。
妄想男子。
私の中では、
「手に入れることのできない『普通の幸せ』を妄想する男子」
ってことにしておく。
あの頃、私は確かに妄想男子だった。
