「えーっと。カビですねー」
とあるネイルサロン。とある夕方。
私はあっさりとカビ宣告を受けた。
「へ?カビ?」
「はい。いやー見事に。カビです♪」
数日前からなんだかおかしいなって思ってた。
右手小指の真ん中辺りがなんか黒ずんでるなーって。
でもネイル(バイオジェル)してるからその中になんか汚れでも入ったのかなーってあんま気にしてなかったんだけど。
ネイル付け替えに行った時、
「あ、そういえばこの黒いの何?」
って思い出したように聞いてみたら、美人ネイリストさん、じっと私の小指を覗きこんで一言。
「カビですねー」
って。サラッとねシャキッとね言い放った。私・目飛び出た。
すんげーフランク。フランクにもほどがある。
もうちょっとさぁ……宣告的に言えんもんかね?
「こ!これは!!……残念ながらカビですね……」
みたいなさ。
そんな今日夜ご飯何食べるー?!風味のノリやだ。
「へ?カビ?あの・・・パンとかそういうのに繁殖するあのカビ?」
「はい、そうです。今からの梅雨時期って多くなるんですよねー。ホラじめじめするし」
ってネイリストさんニッコニコ。その曇り無い微笑みは一体全体何―?!ちょっと美人だからって言うに事欠いてカビー?!
しかもじめじめするのはわかるけど自分の指にカビとか想定外ー!!
どうも付けたネイルが浮いてきて、その隙間から水分が入るらしい。まぁ浮いてきたらすぐにお直しすれば問題ないんだけど、ホラ私って怠惰じゃない?ね?
それにしても・・・カ・・・カビ・・・・
カビか・・・・
※
かび【黴】
有機物の上に生じる菌類またはその菌糸の集まり。糸状菌など、キノコを生じないものをさしていい、適当な温度と水分があれば無制限に成長を続け、至る所に発生する。夏の季語。
以上大辞泉より
適当な温度と水分があれば無制限に成長を続けるー!?てかそれが私の小指系ー?いつの間にカビにとって適当な温度と水分のある場所になっちゃった系ー?!
しかも『無制限に成長を続ける』とか恐ろしいこと書いてる。その内小指から手→腕→肩→背中→胸→→尻→足→首→頭→臨終(享年17歳)
みたいな薄幸なことになんないでしょーねー!?(薄幸は美少女の特権だけどー!?)
「あ、大丈夫ですよ。放っておいても真緑になって爪がふにゃふにゃになるだけだから」
ってそれ問題ー!!
十分問題ー!!
「私も、昔カビったことあってー。観察してみたんですよねー。放っておいたらどうなるか。いやー真緑でしたよ。ホント」
って根性ー!
ネイリスト、人体実験ハンパないー!
「先生―!田中君机にカビパン入れてるー!」
って小学生の頃、先生にチクってた私。あの頃に戻りたい。
田中君は給食のコッペパンをただ机に入れてカビさしただけで、田中君自身にカビなど発生していない。
なのに。なのに私と来たら・・・
どっちかって言えば田中君よりコッペパン寄りの人生―?!
しかも『カビ』って夏の季語―?!
ホントどうでもいいー!!
「いやーこれからの季節多いんですよねーネイルされてると♪」
「あのさ、水虫ってカビの一種なんだよね?」
「あぁそうですね確か」
「てことは私、水虫の手をお持ちなのね?」
「ねー。そうなりますかねー」
NO!!(訳:ノー)
コッペパン寄りの水虫人生をしばらくはうつむき加減で歩こうと思います。
『コッペパン この梅雨空に 手水虫』 あんどう心の俳句
