一昨日台風が来た。そして去った。
私が中学校一年生の秋にも、大きな台風が来た。
家の窓から見ると、一昨日の景色と同じように、雨が真横に殴りつけて、風が木や電線をぐわんぐわん揺らしていた。
当時付き合っていた中学校三年生の先輩は父親とふたり暮らしだった。(古い読者さんなら知ってるだろうけど、「冬の海、天使のハシゴ」の先輩。先輩とのシモネタ話はこちら→ 「初体験の思ひで」
過激なんで注意して読んでね )
けれど、女の家に入り浸ってほとんど家に帰ってこない父親だったので、中三にしてほぼひとり暮らしのようなものだった。
十三歳の私は、台風の日もひとりでいる先輩が心配で、両親が寝静まるのを待った午前0時前、こっそり家を出た。
すごい風と雨で、持っていた傘もすぐにボキボキになった。
もうどこからの雨でずぶ濡れになるのかわからなくて、途中で傘も捨てて、先輩のマンションに着いた頃にはざんざんに濡れまくっていた。
チャイムを押しても、、しばらくシーンとしていた。
雫が前髪を伝って薄暗い廊下にボタボタ落ちた。
もう寝たかな?
思って、ドアに耳をくっつけて中の様子をうかがおうとしたとき、
ガン
とドアが開いた。
「うわ!あぶな!!」
私がびっくりして飛びのくと、先輩はもっとびっくりした顔で
「何やってるん!!?」
とずぶ濡れねずみの私を見た。
「先輩、ひとりやったらこわいかなー思って」
「あほか!」
その後、私は風呂に入れられ、タオルでごっしごし拭かれ、着替えさせられながらさんざん怒られた。
先輩がドアを開けた時に、先輩の肩向こうに見えた部屋の明かりが、とても明るいはずなのになんだかぼんやりと心細く見えて、切なかった。
あぶないやろー
こんな時間に台風の中―
先に電話しろー
私を怒りながらもどこか嬉しそうな先輩の顔が見ることが出来て、安心した。
私は子供ながらに先輩のそんな顔をただ見たかったのだと思う。
ずっとひとりで過ごす先輩の部屋を少し明るく、温かいものにしたかったのだと思う。
サプライズ的に。
当時、十三歳。
あー、殊勝な心を持った私もいたんだよなー
今は全然変わってふてぶてしくなったけど!
ふとそんなことを思い出した、台風の夜だった。
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