太陽が中天に輝き、熱風が街を渡る日曜の昼下がり、親愛なるミスドくんでとある真新しい洋書の頁を捲ると、著者が選んだある女性の短い「先取りした辞世の句」のような言葉が目に留まり、よく読んでみるとそれが実に素晴らしい彼女の人生観として読み取れるのでした。それは次のような言葉です。
When it's over, I want to say : all my life
I was a bride married to amazement.
I was the bridegroom, taking the world into my arms...
I don't want to end up simply having visited this world.
-MARY OLIVER
上掲のオリバー女史の言葉に深い感銘を受けた私は、ひとしきり上に挙げた彼女の「辞世の句」をなんとか日本語に訳せないものかと、沈思黙考しているうちに、気が付くと0.7ミリのやや太筆の青インクで直接ページに思いつくままの訳を書き込んでおりました。
以下は、意訳というよりも私の「勝手な解釈」です(汗) 訳として正しいとはとても思えませんので、英語に通じている方はどうか原文をお楽しみください。
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この世を去るとき、私はこう言い残したい。
生涯私は、胸の喜ばしい高鳴りの花嫁だった。
私は、この美しき世界を抱きしめた花婿だった。
結局この世界に降り立っただけだった、という感想で私はこの生涯を閉じたくはない。
メアリー・オリバー
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これを読んで釈迦が夕日の見える丘の上から発したとされる次の言葉との関連を想いました。
「人の世は美しい、人生とは甘美なものだ」
人生は(と語るほど私は人生を生きてはおりませんが。。。)実に多くの悲喜こもごもを経て経て経て経て経ていく定めの細く長くそして険しい山道のように感じられることもありますが、時に艱難に懊悩とし、時に喜び余って快哉を叫ぶ、そうした一切合切を胸中に宿し、その上で、いやそれにも拘わらず、人の世とは、人生とは甘美なるものだ、とこの麗しき世界に心酔できる境地のなんたる尊いことだろう(!)と人間の尊厳をそこに見出さずにはおれません。
「井の中の蛙大海を知らず。されど空の高きを知る」
ささやかに、ひそやかに半径徒歩圏内のこじんまりとした世界が自分の人生の舞台のすべてだったとしても、見上げれば果てのない虚空がどこまでも続いている!


