8月の読書 | shiratsuyuのひとことがたり

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宝塚観劇や読書の備忘録としてひとこと感想を

オリンピックにパラリンピックが終わり、コロナ感染者数も少し減り始め、家人にもやっとコロナワクチン接種の機会が与えられ、少しだけ穏やかに日々を送れるようになった今日この頃。

宝塚観劇や配信とも少し距離ができてしまいましたが、観ないと観ないで済んでしまう今の私。

おしゃべりが気にならなくなり、煌びやかな舞台を楽しめる日々に復活できますようにお願い

 

いつものペースで進めた8月に読んだ本のアップです本

 

42)梓澤要著『華の譜;東福門院徳川和子』

徳川家康の孫であり、2代将軍秀忠とお江与の娘で、千姫・家光の妹で、108代後水尾天皇の皇后で、109代明正天皇(女帝)の母で、110代後光明天皇・111代後西天皇・112代霊元天皇の養母である徳川和子(とくがわまさこ)の生涯を描いた物語。

安定した幕藩体制を作るため、天皇家は一切政治に口を出さず文化にのみ勤しんでおればよいとの考えを押し付ける徳川家と、天皇の権利を守ることに熱を注ぐ後水尾天皇の狭間で、徳川家の血を天皇家に入れることが最大の課題と入内した和子。

これが武家かと公家からバカにされながらも、持ち前の明るさで自分らしさを失わず幕府と朝廷の融和に全力を尽くす和子。

幾多の困難をかいくぐり多くの人から親しまれ愛されたその生涯。

幕藩体制が安定し、大きな戦いのない江戸時代が長く続いた礎になったのだと、天守閣の無い江戸城を思いながら、和子の生涯に想いを馳せることができた。

読み終えるのに時間がかかったが、読み応えのある小説だった。

 

43)関口尚著『君に舞い降りる白』

東京から盛岡の大学に進学した桜井修二がアルバイトとして働く鉱物店「石の花」で出会う人々と紡ぐ物語。

お客さまの雪衣(ゆきい)、大学の先輩でありお店の先輩でもある彩名、夏休みに帰省してお店で短期アルバイトする志帆、先輩アルバイト退職の代わりに入ってきた安斎さん、そして「石の花」を経営する佐川ミネラル社の佐川社長。

修二が、彩名との初恋が無残に裏切られ、その後雪衣と知り合って雪衣の秘密を知り、雪衣のためにしたことを中心に物語が紡がれていく。

それぞれに人に言えない心の傷を持ちながらも、相手を思う優しさを失わない人々の青春物語で、私には“ちょっと”と思ってしまうこともあったが、青春がいつも優しさに満ち溢れていることはいいことだと感じた。

物語に登場する石たちの解説が面白く、宝石ではなく石であることに好感が持てた。

 

44)まはら三桃著『零(ゼロ)から0(ゼロ)へ』

大学生の時兵役を志願したが、視力が悪く叶わず、父親の戦死もあり終戦後運輸省の鉄道総局に就職した松岡聡一。

鉄道技術研修所が職場となり通うようになる。そこは以前からの技術者と軍出身の技術者が反目し合っている職場でもあった。

軍出身技術者の目標は新しい電車を作ること!

戦闘機零戦を作った技術者が新幹線を作った物語。

自分たちの技術を平和のために使いたい願った技術者とそれに協力した松岡聡一の物語。松岡一家の様子と聡一の恋愛も盛り込まれ楽しい物語になっている。

小中学校の夏休み感想文の課題図書だったらいいのになぁと思いました。鉄道好きの子はきっと夢中で読み進めるでしょう。

戦争に協力したことを悔いる技術者の思いを知ることで戦争の愚かしさ、戦争は人間が起こす最悪のものということを知ることができるでしょう。

また感想文が苦手な子でも読む気になって、今後読書好きになってくれる作品だと思います。

零戦のゼロと0系新幹線のゼロ。

終戦記念日のある8月に読むに意義ある物語であると思いました。

 

45)青柳碧人著『赤ずきん、旅の途中で死体と出会う。』

『むかしむかしあるところに、死体がありました。』に続く昔話を題材にした推理小説。

前回が日本の昔話なら、今回はヨーロッパの昔話。

あの赤ずきんちゃんが、亡くなったおばあさんの仇を討つため旅に出かける。途中に“シンデレラ”“ヘンゼルとグレーテル”“オーロラ姫”と出会いそこで起こった殺人事件を解決しながら最終目的地“マッチ売りの少女”がいるところまで旅する物語。

意外な人物が犯人で面白いと言っちゃあ面白いです。

でもこの人を犯人にしちゃあいけないのではないのとも思いました。

子供の頃の夢がしぼんでしまうし、ヨーロッパのお姫様に憧れたその頃の想いを覆さないでほしいと思いました。

日本の物語なら善人が悪人になっても平気なのに不思議です。

 

46)古内一絵著『花舞う里』

祖母が一人で住む母の故郷、奥三河に父と離婚した母と二人で東京から引っ越した杉本潤。中学2年生。

東京にいた時、同じ生物部の人気者堤冬馬と野鳥好きということで意気投合し、バードウォッチングに出かけ冬馬が運転し潤が荷台に乗って自転車事故で亡くなるという目に遭う。自分のせいなのか、死ぬのは自分のほうが良かったのかと心を閉ざしてしまった潤。

母の「おばあちゃんを一人にしておけない」のひと言で山深い奥三河に引っ越すことになった潤。

そこは700年続く「花祭り」という伝統芸能が根付いているところだった。

伝統を受け継ぐことなんてできないし興味も無いと拒否状態の潤。

たった3人の同級生、山に住む爺さん、舞のお師匠さんである爺さんの孫との交流を通し潤の心の持ち方が変化していく。

圧巻の「花祭り」の様子の描写が秀逸な物語だった。

潤の母親の引っ越しの訳にも涙した。

そして潤の心の変化がこの物語の中心を貫き心を寄せながら読み進めることができ、最後に「冬馬、冬馬・・・・・。会いたいよ・・・・・。」と泣きながら放つ言葉を読んで号泣した。やっと泣くことができた潤を温かく受け入れ見守っている自分がいた。