6日の啓蟄が過ぎるとグッと春らしくなり、虫は少々苦手な私でも嬉しく思います
晴れると陽射しが冬とは全然違うことに心弾む私です。
今頃になってしまいましたが、2月に読んだ本をアップしておきます![]()
6)東野圭吾著『雪煙チェイス』
東京三鷹市で強盗殺人事件が起きた。その事件の殺人容疑をかけられた大学生脇坂竜実。大学の友人波川省吾と飲んでいるときにそのことを知った竜実は自首すると言うが、波川は状況証拠のそろった竜実に無実が通るわけがないという。
竜実のアリバイを証明する女性スノーボーダーがいることを知った波川は彼女を見つけ出すことが先決だと言い、竜実と波川は彼女のホームグラウンド里沢温泉スキー場へ向かうことに。
竜実が犯人だと信じて追う所轄刑事小杉も里沢温泉スキー場へ。
竜実が女性スノーボーダーを見つけるのが先か、小杉が竜実を見つけるのが先か!
緊迫の展開が面白く、最後までハラハラドキドキが続くエンタメ作品だった![]()
7)三浦しおん著『あの家に暮らす四人の女』
東京杉並区にある150坪の敷地に建つ築70年近くになる洋館に住む牧田家。
土地・家屋の名義人である牧田鶴代、その娘刺繍作家の佐知、佐知が間違えて声をかけたことで知り合い親しくなった谷山雪乃、佐知の刺繍教室に通う雪乃の会社の後輩上野多恵美。洋館に同居することになって一年が経った、女ばかり4人の初春~盛夏にかけて起こる出来事が綴られていく。
この4人の関係がなかなか良い。干渉し合うでもなく、しかしそれぞれが想い合う。
水道管の破損、開かずの間のかっぱのミイラ、近くを流れる善福川に住むカラス善福丸の語る鶴代と夫(佐知の父)との話と、すべてが笑える。
広大な敷地の一角にある守衛小屋に住む、鶴代・佐知親子を守ることに使命感たぎらせる山田一郎。
魂になって登場する佐知の父神田幸夫。
彼らにも笑わせられる。
特に佐知の危機を救うため、かっぱのミイラに憑依する幸夫の行動に笑わずにはおられなかった。
まさに、広告宣伝文“笑いと珍事にあふれた同居物語”は言い得て妙。
後味爽やか面白い上質の小説だった![]()
8)須賀しのぶ著『夏空白花』
昭和20年8月15日終戦
全国中等学校優勝野球大会(朝日新聞社主催の夏の大会)を復活させるため奮戦努力する、朝日新聞社記者神住匡(かすみただし)の物語。
球場は芋畑と化し、アメリカの国技を復活させる?との声が聞こえるなか、若者に生きる勇気を与えたい、野球を楽しんでもらいたいと参加を促す地方行脚から始める神住。
ボールをはじめとした道具の調達や、アメリカが押収した球場の使用許可のためのアメリカ軍との交渉。彼らに日本の野球を知らしめるために神住の取った行動は・・・!
今現在の高校野球の興隆に忘れてはならない終戦後の神住をはじめとする朝日新聞社の記者たちの熱い想いと行動。
私も若い頃は高校野球が好きだったことを思い出させてくれた一冊だった![]()
9)三浦しをん著『仏果を得ず』
今月2冊目のしおん作品。
文楽の技芸員は太夫語り・三味線弾き・人形遣いで構成されている。
研修所出身の健(たける)は義太夫語り見習い。師匠は人間国宝笹本銀太夫、兄弟子に幸太夫。
健は高校の修学旅行で文楽を観劇し居眠りをしてしまったが、義太夫語りの声に目を覚まし、その声に圧倒され、その魅力に取りつかれ、研修所で学び銀太夫に弟子入りする。
銀太夫は健に、実力はあるが変人の三味線弾きの兎一郎と組めという。
太夫と三味線弾きは夫婦みたいなもの。太夫の特定の三味線弾きを相三味線と呼び、2人のコンビネーションが義太夫語りを聞く幸せを観客にもたらす。
床本解釈に苦しむ健!兎一郎は相三味線になってくれるのか?恋人に「人生で1番は義太夫語り」と言う健に恋の成就はあるのか?
銀太夫のはちゃめちゃ女遊びなども交え、健の苦しくも楽しい太夫ライフが紡がれる。
著者の文楽愛が紡ぎだすこれまた上質の文楽義太夫物語だった。
図書館の返却本棚からたまたま手に取って読んでみたが、すごく良かった。
10)鯨統一郎著『タイムスリップ紫式部』
著者鯨統一郎氏は覆面作家!
タイムスリップと名付けられた著作が多数あり。
光華女学院に通う高校2年生の本間香葉子が、国語の授業の一環として香道源氏香の実体験をしている最中に平安時代にタイムスリップ。
それも27歳の紫式部の肉体に17歳の香葉子の精神が宿るという変則のタイムスリップ。
そして、清少納言には友人の麓麗(ふもとうらら)の精神が!
2人がタイムスリップした時に藤原道長が殺されるという事件が起こる。
このままだと歴史が変わり香葉子とうららは元に戻れなくなる。
香葉子紫式部とうらら清少納言が協力して犯人捜しを行うことに・・・さてさて犯人は?
紫式部と同時代人の藤原行成・藤原伊周・赤染衛門・和泉式部・一条帝などが登場し楽しく読めた。
肩がこらず暇つぶしにはもってこいの小説だった![]()