“史実にもとづいたフィクション”というのが私の好きな本のテーマです。
巻末を見るといろいろな参考文献が挙がっていて、この作品を書き上げるためにこの作家はこれほどたくさんの文献を読んだのかと感心することしきりです。
きちっと史実を掴み、その上で新たな物語を創作する。
それを楽しく読ませていただき本当に読書は幸せな行為だなと思います。
朝井まかて著『眩』を読みました。
葛飾北斎の娘、葛飾応為の物語
小さい頃から父(北斎)の胡坐の中で絵筆を握っていた娘お栄(応為)
結婚には失敗するも、父と二人三脚で絵を描き続けた娘
絵具を作り出したり、絵絹を張ったり、絵の構想を練ったり
絵を完成させるまでの様々な試行錯誤の様子が描かれて
興味を募らせながら読み終えました。
が、
登場人物のひとりに北斎の孫・お栄の甥、時次郎がいるのですが
これがワルで北斎は「我が孫なる悪魔」と呼び
この人物が最後まで北斎・お栄親子に大迷惑をかけるのです。
読んでいて、真剣に腹が立って仕方ありませんでした。
こういう救いようのない人物を登場させるのも作家の腕ということでしょうか?
物語の最後に武家に養子に行った弟の言葉が胸にギュッと刺さりました。
「姉上は、凄い絵師だったんですね」
読者を幸せにしてくれる言葉でした♡