村田喜代子著『ゆうじょこう』読みました。
硫黄島から熊本の遊郭に親の借金のために売られてきた青井イチの物語。
熊本の遊郭の名は東雲楼
イチや新入りの遊女たちは遊郭に併設された「女紅場(じょこうば)」に通うことに
これは廓で働く女たちの教養の場として楼主組合の出資で設立されたもの
この「女紅場」での様子を中心に話が進められていきます。
だんだん読み進めていくほどに面白さが増してくる小説でした。
そして最後には果敢な廓脱出劇が・・・。
遊女の辛さは何といってもお客のお相手でしょう。心の営み・豊かな感情の世界がなければ女にとって苦痛以外の何物でもないということですね。
また実父が追借金をしてまだ16歳のイチにその負担をずっしりと負わせ、イチに親はいらないと思わせてしまうところはとても切なかったです。
物語とは関係ないのですが、この小説を読んで福沢諭吉が嫌いになりました。
「人の上に人を造らず」と言った人が「貧人に教育を与ふるの利害、思はざる可らざるなり」と言って当時起こっていた労働者のストライキを批判しているのです。貧人などと彼らを呼んで!
遊郭の歴史が完全に幕を下ろすのは何と昭和33年(1958年)4月1日売春防止法が施行された時なんですね。