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中学受験つれづれ-プロ家庭教師の独り言-

中学受験に携わって25年になりました。日々、生徒と触れ合う中で感じることを発信していきたいと思います。

三輪田学園の対塾説明会に行ってきました。(実はひと月以上前)


以前行った時は、ご年配の理事長が出てきて「三輪田学園をよろしく」と連呼されるばかりで、正直「?」と思ったのですが、今回は理事長先生は出てこられず、校長先生中心のお話でした。


創立100年を超える女子校。昔は「制服がちょっと…」という声を聞きました。確かベルトのバックルが三つの輪になっているのではなかったでしたっけ。「あの制服はちょっと引く」と言っていた生徒が結構いました。


今は新制服になりました。ごく普通の制服でプラスにもならないけど、少なくとも制服が嫌だから受験しない、という生徒も出ないでしょうね。無難なデザインだと思います。

しかし、「悪評」(?)高かった旧制服を着たキティちゃんが文化祭で発売されたらあっという間に売り切れたとか…。すると、あの制服、意外とコアなファンを持っていたということなのかな。このキティちゃんの画像は声楽家の佐橋美起さんのブログで見ることができます。(2009年10月6日)


さて、この三輪田学園の創立者、三輪田真佐子さんはどういう人物かというと、
生年: 天保14.1.1 (1843.1.30)
没年: 昭和2.5.3 (1927)
明治期の女子教育者。幼名梅野。京都の儒学者中条侍郎の養女。梁川星巌に師事。息子のない両親の嘆きを聞き女性でも努力すれば学者になれると勉学に励み幼時より漢学の才を発揮。26歳で三輪田元綱と結婚,2男2女をもうける。夫の死後,松山に家塾明倫学舎(1880),東京神田に翠松学舎(1887),三輪田女学校(1902)を開設。(朝日日本歴史人物辞典より転載)


うーん。偉い人だったようですね。当時は「意欲のある女子に学ぶ場所を提供したい」という理想に燃える教育者がたくさんいて、その方々が今の女子教育の礎を築いたわけですがこの三輪田真佐子さんもその一人。下田歌子さん・跡見花渓さん・大妻コタカさん・津田梅子さんら、女子教育の先達とほぼ同時代の人です。

それぞれの方の生まれ年と、学校を開校した年次を記すと

跡見 花渓  1840年生 1875年 跡見開校
三輪田真佐子1843年生 1902年 三輪田開校
下田 歌子  1854年生 1899年 実践女子開校
津田 梅子  1864年生 1900年 津田塾開校


これらの先達がいなかったら、わが国の女子教育はずっとずっと遅れていたでしょう。

1900年というと明治33年。日露戦争の4年前ですね。12歳以上の男女の混浴と未成年の喫煙が禁じられ、小林多喜二と宮沢賢治が亡くなった年。この年の女子の就学率は、というと、修業年限4年の小学校を卒業した女子の2.7%しか中等教育機関(尋常中学校、高等女学校、尋常師範学校)に進学していません。(文部科学省「日本の成長と教育」第二章第二節三項「中等教育の普及と女子教育の振興」による)


しかし、これ、驚いたのは、わが国において女子の半数が中等教育機関(戦後は後期中等教育課程=すなわち高等学校)に進学するようになったのっていつだと思います?1955年で47.4%、1960年で55.9%. ようやく昭和35年になって半数以上が高校に進学したんですね。僕は昭和40年前後の生まれですが、そうか、僕の生まれたときに、15歳年上のお姉さんたちは、ほぼ半数は中学卒業して働いていたのか…。
なんだかびっくりです。


  *  *  *


「誠のほかに道なし」が校訓。このあたりはいかにも儒学者の養女という感じです。
女子教育の根幹は「知育、徳育、体育、美育」。最後の「美育」というのが聞きなれない言葉ですが、「美意識を育てる」ということなのでしょう。

これは大切です。電車の中でおにぎりをむしゃむしゃ食べる女の子。ほぼすっぴん状態から特大のつけまつげまで含めて完璧メイクで変身してしまう女の子。オジサンからすると目が点、です。ぜひ、三輪田に限らず「美意識=身だしなみ、たしなみ」を教育して欲しいと思います。


閑話休題。

僕はこの学校は文系の学校だと思いました。説明会全般から「文系志向」を感じ取れました。
社会科に力を入れている。倫社が必修、というのは珍しいですね。でも倫社は大学の「倫理学・哲学・社会学・心理学」の前座みたいな科目ですから、これからの将来や自分の生き方をしっかり見据えてもらうためにも倫社を学んでもらう意義はある、という言葉は説得力がありました。また高3で政経を取るのも「有権者になる準備をしてもらう」。しごく真っ当な意見ですよね。

また、世の中の仕組みや現代の諸問題をしっかり考えて欲しい、という狙いの下、文学作品を読む「国語科読書」とは異なる「社会科読書」というものを提唱している。


でもいいじゃないですか。理系進学ばっかりが取り上げられる昨今、僕は正直そんな風潮を疑問に思っていました。

もちろん理系はいいのですが、文系だって大切ですよね。

「女子高」→「女子大文学部英文科」という道がデッドエンド(行き止まり。つまり就職で苦労する)というだけで、法学部や経済学部のどこがいけないのか。あるいは語学もいいでしょうし、教員養成だって日本の将来を考えたらとても大切。


そもそも、「理系に強い」といっても工学系や理学部というよりメディカル系、それもずばり「医学部」だけを念頭においている場合が多くないですか。医学部志向の強さに不純な匂いを嗅いでしまうのは僕だけでしょうか。


「リケジョ」(理系女子)や「ドボジョ」(土木女子)もいいけど何事も行き過ぎは良くありません。


「××中学校はどうですか」
「ああ、××中ですか。でも理系が弱いですよね…」
「えっ。ああ、理系ですか。でもいい学校ですよ」
「でも、うちはできれば医歯薬に行かせたいんで」
「…」

みたいな会話。最近多くなりました。


  *  *  *


さて進学実績を見てみます。
千葉大2人、お茶大・岐阜大・信州大・東京農工大・横浜市立大各1人。国公立が7人ですね。在籍170名に対する比は4%.
早稲田合格4名→進学2名。慶応2名合格→1名進学。上智5名合格→3名進学。東京理科0名。MARCH46名合格→21名進学。成成明女(成城・成蹊・明学・東京女子・日本女子・津田塾女子)43名合格。

すみません、最後の成成明女の実進学者数は手元の資料にないので分かりません。だいたい、どのゾーンでも合格者と進学者の比率は2:1前後になるので、20名程度が進学と思います。また学習院に8名合格していますがやはり便宜上うち4名が進学、とします。


さて例によって進学者を全部足していきましょう。

国公立+早慶上智に13名。つまり学年トップ10%にいればこのゾーンに受かっていくと言うことですね。
国公立+早慶上智+G-MARCHに13+25で38名進学。全体の22%ですね。
そしてさらにそれに成成明女の20名を加える。58名。全体の34%。
つまり「学年の上位1割にいれば国公立か早慶上智に、学年の2割にいればG-MARCHに、学年の3分の1にいれば成成明女以上に受かる学校」。


いいじゃないですか。

ちなみにまた代ゼミのサイトを参考にさせていただき、成成明女の偏差値を見てみましょう。比較のためにG‐MARCHの経済学部の偏差値を一緒に載せてあります。


62:明治(政治経済) 立教(経済)
61:
60:津田塾(学芸)中央(経済) 学習院(経済)
59:東京女子(現代教養)日本女子(文)
58:成蹊(経済) 成城(社会イノベーション) 明治学院(法) 青山学院(経済) 法政(経済) 日本女子(人間社会・家政)
57:成城(法・経済) 明治学院(経済・国際・心理) 成蹊(文) 
56:成蹊(法) 成城(文芸) 明治学院(文・社会)


三輪田の6年前の80%偏差値は48(四谷大塚)ですから普通に立派な実績だと思います。

教頭先生の「当校は、入った後あんまり勉強勉強って言わないんです。それでこの実績ですから」というお言葉には思わず笑ってしまいました。
一理ありますが、あんまりそれをずばりと言う学校もないような気がします。


  *  *  *


説明会が終わった後、校舎見学をさせてもらいました。


いやあ、素直に驚きました。
「至れり尽くせり」という表現がふさわしい。
通年使用できる温水プール。床暖房付きの体育館。器楽用と合唱用の二つに分かれている音楽室。地学・生物・化学・物理の一科目一教室ある理科実験室。図書室も一般用と「社会科読書用」の二種類がある。LL教室。パソコン教室。そして採光のいい一般教室。


授業料が月額36,000円。実験実習費が7,500円。施設設備費が12,500円。修学旅行積立金や生徒会費、副教材費などが月額に直すと6,666円。ここまでの合計が62,666円。あとは入学金が30万円、制服やバッグなどが約14万円。

6年間で約500万円。けっして安い金額ではないですね。でもこの環境を考えたら高すぎる金額でもないと思いました。


6年間、週6日、この教育環境の中で過ごせるわけでしょう。
ここで学べる生徒は本当に幸せですね。通わせてくれるご両親への感謝の気持ちを絶対に忘れてはいけません。

そう痛感した説明会でした。




いよいよ夏休みですね。


僕の住む地域にもいろいろな塾のチラシが入ってきます。
「夏に伸びよう」「夏こそ勝負!」「夏を制するものは受験を制す!」


勇ましいですね。


こういった広告を目にすると、煽られます。
「この夏に伸びないとダメだわ」
「この夏が逆転の最後のチャンスね」と。


しかし、「夏に伸びる」というのはそもそも、「何が伸びるのか」という大切な部分を曖昧にして言っているところがあります。そこにはある種のレトリック、というか、教える側のごまかしがあると思うのです。


いまさらながらですが、夏に「何が」伸びるのでしょう。


「学力」。
これは伸びます。もっと分かりやすく言うと「学力の絶対値」。例えば2月1日の受験の日のその子の学力を100としましょう。くどいようですが、あくまでも絶対値です。他のお子さんとの関係ではありません。偏差値と混同しないように、便宜的に「pts」という単位をつけます。(ptsには深い意味はありません。pointsの省略形です)


夏休み前、この生徒の学力がどれだけあったか。もちろん人によりますが、45ptsとか40ptsくらいの生徒はいっぱいいると思うんですね。特に算数は単元別学習をずっとしているので、総合問題にからっきし弱い。「何算か分かれば解けるんだけどなあ」なんてみんなぼやいてます。


例えば偏差値60の学校を本命にしている偏差値55の生徒がいたとします。その生徒が7月に偏差値50の学校の入試問題を、本番と同じ時間で解いてみたらどうでしょうか。びっくりするほど点数が出ません。合格最低点にはるかに届かない、という結果になることさえ珍しくありません。それでご父母は青くなります。そうですよね、50の学校というと抑えですから、イメージ的には、この時期やっても70点くらいはとれるんじゃないか、と。


でもそれが入試問題の厳しさです。


しかし、そういう生徒が2月にはちゃんと7割とれるようになる。つまりこの残りの半年間でそうとう受験生の学力、もっと言えば「得点力」は伸びます。そしてこの夏休みの40日間(今は8/25に二学期が始まる学校が増えたので、前のように決まり文句的に「夏休み40日間」と言えなくなってしまいましたが)は、その「伸び」のかなりの部分を占めている、といえます。夏前35pts→夏の最終日60pts くらいの伸びの子はゴロゴロいる感じがします。

だって朝から夕方までみっちりやるんですから。


だから夏休み、心配しなくてもみんな伸びるんです。


でも勘の良い方は「えっ、ちょっと待って」と思われますよね。
「みんな伸びたんじゃ、成績は伸びないじゃない」と。

そうなんです。それが今回、言いたかったこと。

実は「夏休み、成績は伸びない」んです。


「成績」。正確さを期するために言い換えて「偏差値」。これは当然、絶対値ではありません。他者との関係の中で決まっていきます。これは受験生をもつ親御さんなら常識ですね。


ということは
①A君=67pts
②B君=61pts
③C君=55pts
④D君=49pts
⑤E君=42pts
の5人が全員7pts伸びたら…


当たり前ですが
A君=74pts
B君=68pts
C君=62pts
D君=56pts
E君=49pts
で順位はやっぱり上から①②③④⑤で変わりません。


うーん。困りました。


塾の先生とこんな会話したことはありませんか。

母「先生、うちの子、このままじゃダメですよね。××学園、あきらめないと無理ですよね」
先生「いや、お母さん、まだ夏前ですよ。夏休みで受験生は伸びるんです。今あきらめるのは早すぎですよ」

あるいは
母「もう受験をやめようかって家族で相談してるんです。4年生からお世話になっているのに、全然伸びないし…。もう何だか親もつかれちゃって」
先生「そんな、今やめたらやってきたことが無駄になっちゃいますよ。夏休みで必ず伸びます。もう少し我慢してください」


これ、おかしいですよね。お母さんのセリフには「成績」「偏差値」という語は出てきませんが、あきらかに(他者との関係できまる)相対的なものを頭において心配しているのに、先生は学力の絶対値で話している。分かっていてごまかしているのか、そもそも最初から噛み合っていないのか。


僕は「先生、うちの子、夏休みで伸びるんでしょうか」と聞かれると、正直困ってしまいます。でも騙すわけにはいかないので「成績や偏差値という意味では夏頑張ったからって、そんなに一足飛びには伸びません」と話しています。(でもそれでは身も蓋もないので、「でもしっかり夏鍛錬しておかないと、二学期に伸びるチャンスが来た時にその機会をものにできません」と言い添えるようにしています)


ただ、「志望校の過去問やったら3割しか取れないんです。これじゃ無理ですよね」と言われたときは「いや、これからお子さんたちはかなり伸びますからそんなに悲観しなくても大丈夫ですよ」と言います。


前者は「相対値」、後者は「絶対値」ですからね。


やっぱり6年生の夏休みはみんな必死にやるので、大幅に偏差値を上げるのは難しいと思ってください。これはちょっと古くて恐縮なのですが、2004年から2007年の4年間、大手会場模試の7月の結果と9月の結果を比較したデータが手元にあります。全受験者ではなく、ある塾の塾生がその模試を受けた、その塾生だけのデータですが、各年600以上のサンプル数です。


7月と9月を比較して、偏差値が5以上変動のあった受験生の割合、どれくらいだと思いますか。


年によって若干の変動がありますが、5.8%~11.2%です。つまり「夏前と夏終わった後で偏差値5以上、上がったり下がったりする生徒の割合は10人に1人から20人に1人」。


受験者1万人の正規分布の試験(標準偏差10)で偏差値55は全体の3085位です。偏差値60は1586位。

いやー、これは難しい。偏差値5伸ばすのは直感的に相当厳しいと理解できますね。


マラソンに例えれば夏休みは下り坂なんですね。下り坂はランナー全員がスピードに乗りますから抜くのは難しい。やっぱりスパートをかけたりごぼう抜きにできるのは平地か苦しい上り坂のとき。そしてそれは受験生活で言うと、学校のある普段の時期、なんですね。


もちろん、高校受験、大学受験は別です。運動系の部活を夏まで一生懸命やっていた受験生などは、偏差値が夏休みで驚くほど伸びることがあります。僕の教え子でもかつて、進研のVもぎで7月52だったのが9月で66まで伸びた子がいました。


また小学生でも、夏の過ごし方の振れ幅が大きい小5や小4は別です。また小6でも、1学期の間は地域のスポーツを相当一生懸命やっていた、とか、寺子屋的な小さな塾から大手塾に移って突如開眼した、というような特殊事例はもちろんあります。


しかし、それは残念ながらあくまでもレアなケース。大多数の場合、上に挙げたデータが示しているように、それほど大きくは変わらないのです。

だから、夏休みに過大な期待はしない方がいい。偏差値が急落しなければ、まあ上手く乗り切ったぞ、と思うようにした方がいい。それが僕の持論です。


次回では、もう少し夏休みの過ごし方を掘り下げてお話したいと思います。


さて、芝浦工大柏です。


最近、難化著しいですよね。専松・麗澤とほぼ手を取り合って階段を上がっていく感じ。以前は、千葉というと渋幕が図抜けていて、その後に市川・東邦・昭和秀英が第二グループを形成していて、マラソンで言えば50mくらい離れて専松、芝柏、麗澤、千葉日がまた団子、みたいな感じがあったのですが、第三グループから千葉日がふるい落とされて、専松、芝柏、麗澤が一緒にスパートかけて第二グループとの差がかなり詰まった、というイメージがあります。いや、昭和秀英はすでに第二グループから脱落し、専松、芝柏、麗澤にのまれて一緒くたに第三グループを形成しているのかも知れません。


以前の教えた子が芝柏に進みました。どうですか?と聞いたらお母さん曰く
「すごく、家族的で面倒見のいい学校です。なにしろ校長先生が生徒全員の家族構成を知っているくらい」


(笑)これはもちろん、比喩でおっしゃったんでしょうね。そのくらい行き届いている、一人ひとりに目をかけている、ということのオーヴァーな表現なのでしょう。本当に校長先生が1500名の生徒の家族構成を言えたら、かえってヤバいですよね。


それと「幼い子が多い。田舎のせいもあって、ヤンチャな子やオシャレに興味関心がいっちゃってる子は少ない」ともおっしゃってました。確かに新柏の駅で芝柏のお子さんたちとすれ違いましたが、幼いと言えば幼い。
でも親たるもの、自分も親ですからわかりますが、
「大人びた子ばっかりの学校」
       と
「幼い子ばっかりの学校」
と聞いたら、後者の方がよほど安心して通わせられます。


  *  *  *


単科大学の付属校+駅から遠い(歩くと30分)。正直、ぐんぐん伸びていく要素の乏しい学校、という印象があります。それがここまで人気校になったのはなぜか。やはりそれは進学実績でしょう。


ここで具体的に芝浦工大柏高校の大学合格実績を見る前に、そもそも芝浦工大という大学がどれくらいの立ち位置にあるのか、を見ておきます。


以下は私大工学系の難易度表です。参考にさせていただいたのは代ゼミネット

(http://www.yozemi.ac.jp/rank/gakubu/index.html )です。

67:慶応(理工) 早稲田(先進理工)
66:
65:早稲田(基礎理工)
64:早稲田(創造理工)
63:
62:同志社(理工)
61:上智(理工) 東京理科(工)
60:立教(理)
59:明治(理工) 豊田工業(工) 関西学院(理工)
58:中央(理工) 関西(化学生命工)
57:学習院(理) 立命館(理工) 
56:青山学院(理工) 芝浦工業(システム理工) 南山(情報理工)
55:法政(デザイン工)
54:名城(理工) 甲南(理工) 近畿(理工)
53:創価(工)
52:成蹊(理工) 東京都市(工) 日本(理工)
51:神奈川(理) 金沢工業(工) 龍谷(工) 福岡(工)
50:工学院(工) 東京電機(工) 愛知工業(工) 


工業系のみを取り出しました。工と名のつく学部が複数ある場合、「学部名に工を含み最初に出てくる(偏差値が一番高い)学部」を載せてあります。ただし早稲田は3学部すべて載せました。工を含む学部がなく、理学部しかない場合理学部を載せてあります。
また、工業系の比較なので、医歯薬看護のいわゆるメディカル系、また生命・農などのバイオ系は載せていません。


ご覧になってどうですか。


説明会のときに先生が「芝浦工大だってなかなか、馬鹿に出来ないんですよ」と謙遜しておっしゃっていましたが、馬鹿に出来ないどころか立派、立派。「MARCH並み」と表現してもOKのレベルと言えませんか。


ちなみに、僕の知人で
MARCHの工学部に入学→3年で中退し芝浦工大に再入学→東京理科大に学士入学→東京工業大修士課程修了
という、勉強好きというかモラトリアムというか、変わった経歴の持ち主がいます。今は大手弱電メーカーの研究所である程度のポジションに就いていますが。


彼曰く「MARCHの工学部はだめ。基本的にはMARCHは文系の人のための教育機関。だからお前の教え子で理系志望の子には、早慶か国立目指して、駄目だったら理科大、それもだめだったら芝浦工大、それにも届かなかったら武蔵工大(当時)か電機大を勧めよ」

彼に言わせると「工学部は施設&設備いのち。教える教授が一番の財産である文系学部との違いはそこ」であり、「MARCHの理系に行くなら日大のほうがよい(日大は設備が良い)」とのことでした。まあ、独断と偏見に満ちた個人的見解かもしれませんが、文系出身の自分からすると(そうなのかなー)と思わせるような実感がこもっていました。


なぜこんな話から始めたかというと、芝浦工大柏の説明会で「学年全体の××%がMARCH+芝浦工大以上」と言われていたんですね。そのとき、「そういう言い方をされるのなら、芝浦工大はMARCH並みかそれに準ずるレベルなのだろうなぁ」と思って聞いていたのですが、調べてみて得心がいきました。


では仔細に今春の合格実績を見てみましょう。
278名の卒業生数で、国公立現役合格24名。旧七帝大こそ4名ですが、残りの20名は千葉大9、筑波大4、首都大東京4、そしてお茶の水女子大、弘前大、防衛大学校各1。1割弱が現役で国公立合格。悪くないですよね。


私大はどうかというと
早慶31名合格→19名進学、上智に合16名→進7名、東京理科大に合54名→進23名。MARCHに合146名→進39名。理科大への合格者の多さはさすが、という感じです。


で、国公立合格者に、早慶上智と理科大とMARCHへの実進学者を合計してみます。24+26+23+39=112名。そして芝浦工大に内部推薦した35名を加えます。すると、278名の卒業生のうち、147名がMARCHor芝浦工大以上に進学していることになります。割合は約53%.つまり学年の真ん中にいればMARCHor芝浦工大以上に行ける、ということですね。

これは強みです。
「真ん中にいればMARCH以上に行ける」学校はそんなには多くはありません。


ただし。
「理系志向の子供の全員が、工学部が合っているわけではない」
ので注意が必要です。


工学部は建築だろうと土木だろうと電気だろうと機械だろうと応用化学だろうと、基本的には「モノつくり」の工夫です。ところが「僕はバリバリの理系です」という子の中には、何割か、そういう、モノを作ったりすることはテンで駄目、という子もいます。その代わり宇宙の誕生とか素粒子の話とかは大好き。


そういう子はモノを分解したり組み立てたりすることに興味関心がありません。手先もすごい不器用だったりする。「理論の世界」に遊ぶのが好きなんですね。僕の伯父がそうで、電荷密度と電場とかマクスウェルの方程式とかを大学で一生涯勉強していましたが、ラジオひとつ直せない人でした。日曜大工で棚を作ったのはいいんですが、茶碗だか皿だか載せたらすぐ壊れてしまってそれを伯母が伝えたら「ばか、何でモノを載せたりするんだ」と言い放った人でした。そういう人が工学部に行ったらきっと絶対後悔しますよね。


勉強を教える側から芝浦工大柏に注文がひとつ。注文というと僭越ですが、算数を教える立場からすると、工業系の大学の付属中学校にしては算数が簡単すぎませんか。説明会では「受験者(合格者、ではありません。受験者全体、です)の平均が60点になるように作っている」とおっしゃっていましたが、将来工学部に進む子の割合が多い学校ならばもう少し算数の各問題の難度を上げた方が良いのでは…と思いました。老婆心ながら。