BL

『生贄のお勤めは、』
感想
~「エロス」+「シュール」+「神様」~
博士/講談社・一迅社 gateau comics
 
 
 
久しぶりの商業BL漫画の感想です。
正月に『ごめんしたって許さない』を読んでからこの作家さんの作品をちょいちょいチェックしております。この漫画のゆるい変な間がすごくツボにハマったので感想とあらすじを書かせていただきます。
 
※表紙はそんなことない(?)けど、ラブシーン多めな物語ですので、気分じゃない人は気分が乗ってから購入されることをオススメします。
 
 
◆あらすじ
小さな村を守るため、犬神の生贄となるため身を捧げた主人公・蛍(けい)だが、神様は超やる気のない超失礼なやつで・・・。
BL初心者さんには向かない(最初のBL作品これじゃなくても・・・っていう)気もするけど、何でハマるかは人それぞれなので、とりあえず読んでみましょうね真顔
 
村にある犬神様の祠に行ってみるも、そこに神はおらず、神は事業に成功して都会暮らしをしていた。
 
 
◆俺様神さま
(『生贄のお勤めは、』2019 博士/講談社・一迅社 gateau comics)
 
「滅びろそんな村」
 
生贄は女の決まりだったはずなのに、もう村には良い年頃の女がいない・・・仕方なく男の蛍が来ることになってしまった。
 
一瞬、間があってからの神様の「滅びろそんな村」です。このドヤ顔です。
 
あーはいはい。やる気無い系の神様ね。って最初は思ってたけど、この間が絶妙なんです。この後この間がどんどん癖になっていくんです。絶妙なシュールさを生みだしているのです。エロス+シュール+神様なんです。お布団シーンは、お布団の上だろうがトイレだろうが多めなんですが、その場面はさすがに載せられないのであれですが、このワンコ神様とのエロスも見どころの一つではあります。でも私として変な間とシュールさが1番のツボです。とにかく、この変な間にドハマりしてしまったのです。
 
 
 
◆村を救ってくれるんじゃないのか
 
『確かに10年に1度女どもを犯して食って捨ててきた』
『俺は人間をいじめるのが大好きな神なんだ』
 
神様のこの言葉に唖然とする蛍。
 
おいおいおいー!!神様、村を救ってくれるんじゃないんかいー!!!何のために蛍は生贄になったんだ。っていうか、こんな大都会にやってきたんだ。
 
この話の落とし所ってどうなるんだろう・・・
 
まじで話が見えません。初期の『進撃』並に物語の続きが読めません。でもこの時はまだ『進撃』のようなどうなるんだ??という期待感・・・というよりも、大丈夫なの??という心配が勝っていました。
 
 
 
◆いきなりの濡れ場。
神様・・・村は救う気ないわ、生贄を襲うわ・・・もうカオス。いやBLだから濡れ場は有り難いんだけど・・・こんないきなりまぐわっちゃって・・・どうやって好きになれば良いんですか神様・・・どこに惚れれば良いんですか・・・。神様の掴みどころが無さ過ぎる。
 
BLだって少女漫画だもん・・・これ、蛍くんも神様もお互いを好きになる・・・んですよね?一体どうやって??
 
 
◆謎に可愛い神様
(『生贄のお勤めは、』2019 博士/講談社・一迅社 gateau comics)
 
 
濡れ場の後このまま生贄(一応)として死んで終わりなのか・・・とぼんやり思う蛍だが、目覚めたらなぜか普通に生きている。
しかもいきなり「風呂に入れろ」と言う神様。
ここら辺の間も最強です。我儘な感じがだんだん可愛くなってくるのです。
 
なんでお風呂・・・いや可愛いけどっていう感じです。
 
お風呂の泡が神々しい駒犬みたいになってますね。ライオンや麒麟を思わせます。可愛いけどイゲンある佇まいです。さすが神様。腐っても神様だわ。
 
あんな偉そうなくせに、なぜか・・・あ、素直に洗われちゃうんだ・・・っていうおかしさがあります。
 
その後ベッドにゴロンゴロンして、かなり満足そうなんです。
 
か・・・かわ・・・っ
 
可愛いじゃないか・・・!!!
 
 
◆高級クラブで散在したり、イチャコラさせられたり・・・勝手に拗ねたり・・・神様は本当に自由奔放で、蛍には全く理解できません。
こんなことをしていて村をまもれるのか、不安は募ります。
緑の少ない大都会。ベランダでプチトマトを栽培しささやかながら心の癒しを得た蛍だが、台風が近づいてきていることをニュースで知る。
神様との不思議な生活中も、いつも気にかけるのは村のこと。洪水や山崩れから村を守って欲しいのに、神様はそんな素振り全く無しで、ぐうたら三昧。
 
 
ええええ・・・これ台風来て村潰れて・・・もうこれでお前の心配は無くなったなとか言いだしそうw神様ほんと大丈夫なのかな。この神様マジでやる気なさすぎだもん。本当にどうやってこの神様を好きになれば良いんだ。何か村はなくなったけど俺がいるから良いじゃんみたいなシュールなラストで終わるのかなって不安になる。
 
 
 
◆遂にブチギレる蛍
(『生贄のお勤めは、』2019 博士/講談社・一迅社 gateau comics)
 
 
「虫がくるから」
 
の一言で大事にしていたプチトマトを捨てられ激怒する蛍。滅多に怒らない仏の蛍くんの叫びも
 
「うっさ」
 
の一言で一蹴されてしまいます。こういうところ、なんとも言えません。温度差がたまらん。必死な蛍くんに対して全く意に介してない神様・・・マジで何考えてんのかよく分からんところが・・・変なんだけど、なぜか読んじゃうの。
 
もう村に帰っちゃうもんねー!!!!と蛍が啖呵切って飛び出すのですが・・・
 
あ、帰るんだ・・・この神様、蛍が帰ったって何したって気にしなさそう・・・って本気で心配しちゃう。でも気にしてないように見えて実は気にしてるんだよね。
 
考えてること全然読めないんだけど、何か寂しがり屋というか、構ってちゃんなとこあるんだよね。
 
それが凄くシュールな話に合ってるんです。エロス+シュール+構ってちゃんな話なんです。
 
 
◆怒って神様に失礼なことを言う蛍にムッとした神様。大人げなく蛍を組み敷く。台風が来ているから村に帰りたい蛍の気持ちを無視してラブシーン突入。
 
 
 
◆その後まさかの・・・
(『生贄のお勤めは、』2019 博士/講談社・一迅社 gateau comics)
 
 
『百年先もお前とこうしてたいよ』
 
いきなりきたこの蛍の夢にあんぐりです。
 
これ、犬神様が本当の犬だった頃?何かこの男の子も着物姿だし・・・だいぶ昔の記憶・・・とか?
 
え・・・まさか2人は遠い昔からの縁があったんですか??嘘でしょう。
 
そんな雰囲気全くなかったんですよ???
 
この夢が二人の過去なら、二人はもう・・・そりゃすごい絆で結ばれてた(る)に違いない。このことを犬神様は忘れてるわけない。
 
この話の肝は、何気に「犬」なんですよね。飼い主の言うことをよくきくとか、構って欲しいとか、構わないと拗ねるとか、この神様はちょいちょい猫っぽい所もあるんだけど、素は完全に「犬」だと思う。この作者さん、ワンチャン好きなのかなって思う。猫より犬派・・・なんつって。漫画家さんは猫飼ってる方が多いような気がするのでこの作者さんが犬派かどうか、失礼ながら全然存じ上げないのですが・・・すみません。とにかく作者さんの「犬愛」は感じました。
 
出会った瞬間に前世の縁を感じてビビビーってなるとか、蛍はよく昔の変な犬との夢をみるとか・・・そういう描写全く無かったですよ???いきなりー???
 
展開運びが凄い。
 
凄い。この作者さんは凄い。
 
勝手に一人でテンション上がりました。
 
 
 
◆しかも災害はちゃっかり神様が何とかしてくれる
(『生贄のお勤めは、』2019 博士/講談社・一迅社 gateau comics)
 
 
 
「あなたが助けてくれたんですか?」
 
「俺は神様だぞやってできないことなんかないんだ」
 
偉そうな神様が・・・遂にその言葉通り偉いことをした!!!やったよこの神様!!!やりよったよ!!!
 
全然、村のことなんて、ていうか他人のことなんて考えて無さそうなこの人が!!!意地悪ばっかしてきて子どもみたいに拗ねるこの人が!!!そんな村を救えるような力、本当に持ってたなんて・・・そこに驚きだ。ちゃんと村を救う気、あったんですね!!(失礼)
 
神様にはそんな力なんてないんだぜっていう寂しいラストもちらりとよぎっただけに・・・この時の感動は説明できません。
 
しかもこの見事な村の避けっぷりですよ。華麗なる土砂さばき。神様様!!ですね。ニュースに出るお婆ちゃんの可愛いこと!この人も昔は生贄だったのかな・・・とか想像しちゃいますね!!
 
 
何か凄い良かったですね。
 
このやる気ない酷い神様とどうやって結ばれるんだろうって心配してましたが、まさかのラストは王道の、昔からの縁が2人を結ばせてくれたわけですね。それでも、王道っぽくない展開運びがもう完全にツボで・・・何か面白くて読んじゃうんですよね。しかもラブシーンも充実。
 
博士先生の絶妙な間の取り方・・・アクロバティック(?)な展開・・・ツボでした。あー面白かった。そして、最初は可愛くない神様がどんどん可愛くなって最後は笑えました。こんなアホみたいな幸せ展開、1巻完結だとラストがあっさりすぎて苦手なことの多い私ですが・・・物凄く満足です。エンターテイメントでした。
 
 
 
この後、蛍くんが犬アレルギーのぜんそくで不憫に思った神様が蛍君を村に返し・・・2人は離れ離れになるのですが・・・さて!!ラストは結ばれることができるのでしょうか!!そして神様と蛍君の過去やいかに!!!
 
というわけで、ぜひ読んでみてください(^O^)/