この二年間というもの、あちこちへ出かける機会が減って、すっかり足腰がなまってしまった。外をひとりで歩く分にはだれに気兼ねすることなく季節の移ろいを肌で感じられるはずなのに、気持ちが動かないと、体も動かなくなる。だから、気持ちをもう一度外へ。

 リスタートはやはり野川がいい。橋の上から川の流れを見下ろして、土手を歩く人を眺めて、岸辺の花や木や生き物を楽しんで、遠くの空や雲を見上げよう。

 三鷹市から調布市にかけて、このまちと呼んでいる範囲には全部で二十四の橋が架かっている。一番北には人見街道を渡す御狩野橋、一番南には甲州街道を渡す馬橋がある。

 通りや街道を渡す大きな橋、車では渡れない細い橋。静かな橋、にぎやかな橋。多くの人が行き交う橋、そこで暮らす人が使う橋。地域の名前をつけた橋、人の名前をつけた橋、なぜその名前をつけたのか不思議な橋。ほとんどの橋は昭和四〇年代の同時期に架けられ、た兄弟橋のせいか、どれも似ているようで個性がある。

 秋晴れの日の朝から夕方まで、ひねもす野川の橋めぐり。一番近い橋からはじめて上流へ向かうか、下流へ向かうか。まだ渡ったことのない橋もあるだろう。お気に入りの橋が見つかるかもしれない。

 少しずつでいい、気持ちをもう一度外へ向けて、歩きだそう。わたしたちが大切にしなければいけないものは、きっとすぐそばにあるはずだ。

 

(『そよかぜ』2021年10月号/このまち わがまち)