柿の木のある家にあこがれて、でも柿の木を植えるための庭がない。ベランダでイタリアンパセリを育てるのがせいぜいのわが家には、家の庭でとれた柿を食べるなんて夢のまた夢。
 ということで、今年も食欲の秋、到来です。
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 三鷹の特産品といえばキウイフルーツ。でも、それだけじゃあない。秋の味覚のひとつ、柿もキウイに次いで生産量が多いのだ。
 柿は食べるもの、甘いもの。というのは江戸時代になって、甘柿が庶民の口に入るようになってからのことだ。それまでは柿といえば渋柿。それも食用よりはむしろ柿渋をとって防水、防腐、抗菌の効果を利用するか、食べるとしたら保存食として干し柿にしていた。
 一方、甘柿の登場はおよそ八〇〇年も前にさかのぼる。多摩川を挟んで向かい側の川崎の麻生区にあるお寺に自生していた柿の木、のちに「禅寺丸柿」と呼ばれる甘柿を偶然見つけたのがはじまりとされている。その後は全国に広がって、次郎、富有、松本早生、御所、御代、伊豆、愛秋豊など数多くの品種の甘柿が生産されるようになった。
 さて、三鷹の柿。生産量は約六〇トン。キウイフルーツが七三トンだから、これから人気が出たら三鷹の特産品として売り出す......かもしれない。このまちの土地で採れた柿だから、きっとひと味もふた味もおいしいはず。ご近所の農家の玄関先でもし立派な柿を見かけたら、ぜひおひとつ。
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 ときにはあせらず、ひとやすみ。ふとした寄り道のその先に、新たな出会いが待っている。

 

(『そよかぜ』2021年10月号/ひとやすみ)