神津島の空港へ新聞を届ける。だれも見たことのない、そのルートを追う――。
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 事前に神津島の担当者に連絡をして、航空券を買って、いざ出発の日の深夜一時半。顔に当たる雨粒がしだいに大きくなってくるのを感じながら自転車をこぐ。
 午前一時四五分、ASA調布西部の販売所到着。蛍光灯の下に神津島行きの新聞がビニールに包まれて出発の時を待っている。午前二時、調布飛行場へ。真っ暗な空港ロビーに新聞の束を並べて置く。ふだんの配達はこれで終了だが、今回はここからが本番だ。
 フライトまでいったん帰宅、仮眠を取る。午前七時、起床。本降りの雨の中、ふたたび空港へ。八時十五分、空港到着。搭乗手続きカウンターで大雨のため欠航の可能性があると伝えられる。
 出発時刻の八時四五分をとおに過ぎた九時五分、天候の回復が見込めず、本日は欠航とのアナウンスあり。航空券の払い戻し手続きが淡々とはじまった。九時一五分、空港をあとにする。
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 欠航では新聞も届かない。明日も雨の予報だ。次のチャンスを待つしかない。(続く)

(『そよかぜ』2021年7月号/このまち わがまち)