Black Lives Matter運動が再加熱する引き金となった「ジョージフロイド殺害事件」が起こって4か月。アメリカ国内外問わず、多くの有名人がこのBlack Lives Matter運動への賛同を表明、呼びかけており、それは今も続いている。

 

ちょうど同じ時期に、映画『グリーンブック』を観る機会があった。グリーンブックとは、アメリカでの人種隔離政策時代、車で旅行するアフリカ系アメリカ人向けに発行されたガイドブックのことで、旅中に不快な思いをしたり、自らトラブルに巻き込まれたりすることがないことがないようにと編み出された本だ。

 

ホテルは黒人専用、ゲストとして招かれてもレストラン、トイレは使わせてもらえない。スーツの仕立ても断られ、夜出歩くだけで警察から不当に扱われる……。作品内のこのような描写にすらショックを受けるが、これでも現実よりは優しいほうだろう。「黒人」というだけでさまざまな制限があったり、危険にさらされたりする、ということ自体が理不尽なのだが、長年変わらない差別から身を守る術としてこういった予防策を講じていたという歴史を知ると、なんとも切なくなる。

 

「白人」の元同僚に、なぜ人種差別はなくならないのかと問うと、自分を含め大多数の白人が「差別」には断固反対している。一方、ほんの一握りだが、育った家庭によっては差別的思考が残っている人がいることも事実。さまざまな民族が共存する社会で、自分とは異なるものから一時的に身を守り、観察するという意味で「区別」することは仕方ないことなのかもしれない、と話していて、それには納得してしまった。

 

当たり前になった文化を見直すのにはもっと時間が必要なのかもしれないが、それぞれの民族が自分との違いを「区別」したうえで “Every Race Lives Matter”の社会を目指せたらなあと、きれいごとながら考えてしまう。

 

横野佐友里