悩んでいる時、思考のとっかかりやヒントを探したくて書店に行く。目につくのはハウツー本ばかり。「自分を肯定する方法」「1日が有効に使える時間術」「仕事の処理速度はこうあげろ!」……。「成功するために必要な○つの習慣」といった自己啓発の本も次から次へとかたちを変えてはあらわれる。でも、自分も含め、自己啓発本を読んで実行に移し、成功した人にお目にかかったことがない。
なぜだろうと考えた時、以前聞いた“Doing”と“Being“という言葉を思い出した。コーチングの世界には、「Doing(やり方)よりBeing(あり方)が大事」という教えがあるそうだ。Beingには、心がまえや物ごとに向かう姿勢、存在意義といった意味も含まれる。Beingという土台がぐらついていては、いくらDoingを学んでも土台から崩れ落ちてしまう。だからこそ、まずは自分のあり方を問い、変えていくことが大事だという。
早起きする生活にあこがれて、起床法にまつわる本を読んでみる。2、3日は朝7時に起きることができる。しかし、3日以上は続かない。4日目には起きる時間が30分遅くなり、5日目には1時間遅くなる。1週間もたてば、起きる時間はすっかり元通り。これなどは、Doingに頼って自分を変えようとした典型的な失敗例だ。
そこで自分にあり方を問うてみる。なぜ自分は早起きしたいと思ったのだろうか。まず、思考力が一番働くのが午前中だから、その時間を少しでも確保したいと思ったからだ。ではなぜ、思考力が働く時間を確保したいと思ったのか。それは、午前中になるべく仕事を片付けてしまい、自由な時間を増やしたいと思ったからだ。ではなぜ、自由時間を増やしたいと思ったのか。それは、仕事とは関係ない書き物をしたり、本を読んだりする時間がほしいからだ。では、なぜそれらの時間が必要だと思ったのか……。このように、自分の思考を深く掘り下げていくことで、少しずつBeingらしきものに近づいていく。
自分がどうありたいのか。こればかりは誰からも教えてもらえない。正解もない。だからこそ、自問自答を繰り返しながら、思考を掘り下げ、導き出すしかない。
なにかを変えたいのにうまくいかない。続かない。そんな時は、別のやり方を探す前にあり方を問うてみてはいかがだろうか。
マリエ・アントワネット