昨年、改宗してイスラム教徒(ムスリム)になった。イスラム信仰には最も重要とされる5つの柱がある。1つ目は「アッラーの他に神はなく、ムハンマドはアッラーの使徒である」と信仰を告白すること。2つ目は日に5回、決められた時間に礼拝をすること。3つ目は自分の財産から一定割合の金額を寄付(喜捨)すること。4つ目は毎年ラマダンの月に断食をすること。5つ目は生涯に一度は聖地メッカへ巡礼すること。

 

いまはちょうどラマダン。一年のうちで最も神聖とされるこの1か月間、私もムスリムとして断食を行っている。ムスリムが断食をする理由は信仰のほかに、世界の飢えに苦しむひとを思いやるため、デトックスして健康を促進するため、快楽を控え自己の精神を成長させるため、などさまざまなことが挙げられている。

 

断食といっても、完全に飲まず食わずではない。日の出から日没の間、飲食を断つ。いまの時期、日本では日の出は朝5時前ごろなのだが、「イムサック」と呼ばれる朝食を食べ終えるのに推奨される時間は実は朝2時45分ごろ。深夜に一度起きて早すぎる朝食をとり、また寝る。という二度寝生活をしている。

 

夜たくさん食べてから寝るので、この時期に逆に太ってしまうという人もいるようだ。私の場合、昨年初めて1か月の断食を実行した直後は2キロくらい痩せて喜んだのだが、ラマダンが終わってふつうの生活に戻ったとたん、体重ももとに戻った。

 

もうすぐ40という年齢で、それほどエネルギーを必要としないのか、断食が耐えられないほど辛いということはないが、1か月も続くとだんだん疲れてきて最後のほうは元気が出なくなる、というのが実感だ。

 

断食を通して、私が一番感じるのは食のありがたみだ。日が沈んだあと、食事ができることに感謝し、のどの渇きが癒えること、お腹にモノが入ることに幸せを感じる。ふだん当たり前にしている行為がこれほど貴重に感じられる時期はほかにない。

 

空腹で辛くならないコツは、日中できるだけ飲食について考えないようにするに尽きる。しかしながら、現在は緊急事態宣言で自宅からテレワーク中。オフィスであればひとの目もあり我慢しやすいが、食料棚と冷蔵庫にすぐに手が届く状態での断食は難易度が高い。本来は自制心を養う行為のはずが、逆に己の欲の強さを感じている。

 

さて、今夜は何を食べようか。

 

サルマ