イギリスの友達の娘さんが医大生なのですが、今の思いを書いた記事がジャパンタイムズに出たそうです。
日本語に訳してくれたのでここに載せさせていただきます。
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自分は大丈夫。
私とは直接関係ない、と思っていませんか?
私も二週間前まではそう思っていました。若いし、健康だから。
でも両親は?隣人は?友達、そして彼氏の家族は?ちょっと顔を合わせてコーヒーを一杯飲むだけのつもりでも、その行為で知らないまま何人にウイルスを移してしまったか知った頃にはもう手遅れ。
誰も自分の親が入院する羽目になった原因にはなりたくないはず。
このウイルスとの闘いに美談はありません。
隔離され、最悪の場合独りで苦しみ、独りで亡くなる。
家族から離され、集中治療室で。
私はイギリスで医学部4年生の日本人です。
日本がコロナウィルスを上手く管理しているのを安心して、そして誇らしく、見守ってきました。このウイルスを抑えることが出来るとしたならば、有能な医療従事者を抱え、衛生管理や災害対策が徹底された国である日本だろう、と楽観していました。
しかし、日本でも昨日新感染者が60人を越したというニュースを聞いて、大きな恐れを覚えました。
東京の祖母からはまだカフェやレストラン、店などが人で賑わっていると聞いています。
「うん、こっちは全然大丈夫だよ。会社が心配だけどね、みんな普通に毎日過ごしてるよ。」
怖いです。
この不理解によって何人が犠牲になるのか、怖いです。
今は大げさに聞こえるかもしれません。
でもイギリスではコロナに対応するのが遅かったため、今になって初めて、数週間前に間違った選択をしたことの被害を感じ始めています。
昨日、1日で209人亡くなりました。
集中治療室は満員。
ガウンやマスクが足りない中、医師、看護師問わず医療従事者がコロナウィルスに倒れています。
状況が改善する見込みはありません。
昨日(3月28日)NHSイングランド(国営医療機構)の国立医療局長は「英国のコロナの全死亡者が2万人未満に抑えられるなら良い結果だ」と発表しました。
医療現場を補強するため、政府は医療従事者のみならず、手を貸せる人は名乗り出て欲しいと呼びかけをしています。
母の友人の女医は、通達で子供二人をロンドンに残し、地方の病院のコロナ対応に派遣されることになりました。
引退した医師も呼び返され、20年間眼科しかしていなかった別の医師も、地方の病院のコロナ対応を任されるといった、普通ではあり得ない配置通達がありました。大学病院で働いている教授は、家族にウイルスを感染する事を恐れて何週間も家族に会えないままでいます。
医学部最終学年の先輩達は人手不足の臨床現場で働いています。
年度末試験は全てキャンセルされました。
そして今週、私にも協力要請が来ました。
先週政府は「ロックダウン(全面閉鎖)」を発表し、スーパーマーケットと薬局以外の小売店や職場は強制的に閉められています。
ですがそれまでの数週間に起こった感染については、取り返しがつきません。
患者の数は増える一方です。
でも事態を甘くみていた為、準備不足で医者、看護師、人工呼吸器、マスクなどが足りません。
心配です。
昨日、近所の道角に、イベント会場の様な大きな建物が立っているのに気づきました。
その大きな白い建物は仮設の遺体安置所でした。
色々な話が流れてきます。
知り合いの中で数日前両親を訪ねた方がいるらしい。
彼女は症状がなかったためコロナにかかっていることを知らなかったようだ。
数日後には両親二人とも入院することになった。
そして隔離され今は会う事もできない。
別のケースでは、お婆さんが亡くなった。しかし、最後まで家族は面会できず、遺体も危険物扱いで、密葬の後に直ぐに火葬されてしまった。
イギリスが後手後手の対応で貴重な時間を失い手遅れになってしまったことを目の当たりにし、日本が今同じ道をゆっくりと進んでいるように見えて黙っていられず、筆をとりました。
日本には未だ、最悪の展開を防ぐ機会が残っています。
今日、今から行動を変えれば被害者の数を抑えることができるのです。
しかし、その行動を起こすのが明日、明後日では遅い。
このウイルスは政府や医療機関だけで戦える相手ではありません。
一人一人皆責任を持たなければならない。自分のためだけではなく、身の回りの家族、隣人、寝食を犠牲にして働かないといけなくなる医者、看護師、医療従事者のために。
お願いです。
外出しないでください。
自分のためではなく、大事な人、愛する人たち、社会を保つために。
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英語が得意な方はジャパンタイムズの原文を読んでください。
彼女の思いがもっと伝わるかと思います。