+ 口紅のとき【角田光代】 | around the secret

+ 口紅のとき【角田光代】

 女性の人生の節目節目に存在する口紅。

 短編集と、多くの写真。

 色が鮮やかだからか、ファンデーションやシャドーと違って、ほぼマストだからか。
 何よりつける姿が一番絵になるからか。

 つけまつげをつける姿はどこか間抜けなわけで。世代による美意識の違いなのだろうな。

6歳 母。
12歳 祖母を、みおくる。
18歳 初恋
29歳 結婚
38歳 母として。
47歳 娘に。
65歳 夫を、みおくる。
79歳 老人ホームで。

私の「口紅のとき」。
 鏡台の時代は、もう終っているのだろう。
 私が幼い頃。部屋の仕切りは開けっ放しの障子、個室の概念が殆どなかった家の中、鏡台とその前だけは母親だけの領域だった。
 自分も一度化粧品を触ってみたかった。色とりどりの小さい瓶。
 やってみる?と言われ、口紅を塗った。家族の前に出た時
・・・・・・思いっきり笑われた。

 母はその時の話を「おしゃまな少女らしい可愛い話」として暫くネタにしていたが、あの時笑った母の顔は正直恐かった。女は産まれた時から女と言うが、それは本人の問題だけではなく、幼い頃から「女レース」に参加させられているという意味でもあるのだろうな。