タイトルのまんま
Blu-BiLLioN
Aquaを小説化
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町外れにある小さな錆びた
熱帯魚ショップ
その暗い隅っこに
僕は寂しく一匹でいた
透明な檻の中にただ一匹
喜びも悲しみも怒りも
そんなのを抱く出来事もなければ
相手もいない
感情なんて必要なく
ただ狭い檻の中を泳ぐだけの
意味のない毎日を過ごしていた
ずっとこんな毎日が
続くと思っていた
君が現れるまでは。
カランカラン
小さなお店に響くドアを開ける音
久々に誰か来たのかな?
僕には関係ないけど…
『わあ!この子可愛い♪』
きっと人気者のあの魚の事だろ
って思ってふと
前を向くと
水槽にぺたーっと
顔と手をくっつけて一人の
女の子が見ていた
「それが気に入ったのかい?」
『うん!でも私のお家は
お魚飼えないんだ…』
「そうかい…じゃあいつでも
遊びにおいで。
そいつも毎日暇そうだからな」
目の前で店のお爺ちゃんと
女の子が会話を繰り返す
会話が終わり
また女の子が手を水槽に
くっつけてこっちを見た
『本当可愛い…毎日遊びくるね!
そうだ!君の名前はアクア!
アクアって呼ぶね!』
アクア…
夢も光も感情もない世界で
生きてきた僕に…こんな僕に…
君が僕にくれた1つの愛
このとき僕は
初めて感情を抱いたんだ
その日から君は毎日のように
僕に会いに来てくれた
『アクア!おはよう♪』
『アクア!お腹すいてない?』
『ねえ!アクア!』
小さな君は無邪気に微笑んで
いつも嬉しそうに僕を呼ぶの
僕にくれた名前『アクア』
何もない冷めた心が
君を見るたび優しくなって
そして君を思うたび
辛くなる
報われないって知っていたから…
君がいつものように
顔をくっつけてこっちを見る
僕はこっそり
君の唇にガラス越しで
重ねてみたんだ
君が欲しいよ
君が欲しいよ
叶わない想いと知っていても…
『アクア!今日はね~』
『アクア!みて!新しい服!』
『ねえ!アクア!可愛い??』
君に触れてみたいよ
感じてみたいよ
純粋で汚れもない
君の透明な心を…
君を見て一喜一憂する毎日
そんな日々が続いていた
カランカラン
あっ!今日も君がきた
会いたかった…
毎日会ってるのに
君が帰ると寂しくて仕方ないんだよ
いつも笑顔で来る君が
今日は泣きそうな顔だった
どうしたの?
何かあったの?
そう言ったところで
君には届かない
『あのね…アクア…
私アクアとバイバイしないといけないの』
女の子は目に涙を溜めながら
必死に僕に伝える
『パパのお仕事でね遠くへ
行かないといけないんだ…
ごめんね…アクア…』
小さな体は
悲しみでただ震えていた
そんな君にかける言葉も
見つからない
永遠の別れだと
僕は痛いくらいに分かった
『アクア…ありがとう…
だいすき…アクア…』
君は途切れ途切れで
言葉をかけながら
水面にいくつもの
輪を描いていた
僕が君を愛してたように
君も僕を愛していたんだね
君の愛を体で感じながら
流せない涙を流した
お礼に歌を送ろうとして
思いを込めても
泡になりただ消えてくだけ
最後だからこそ
君のとびっきりの笑顔を
見せて欲しいんだ
僕も泣くのは我慢するから…
君に笑ってほしくて
小さな海を華麗に泳ぐ
『アクア…
ありがとう…
アクア…アクア…』
やっと笑った…
消えそうな声で何度も君は呼ぶの
僕の名前を…アクア
君が欲しくて欲しくて仕方ない
もう二度と会えずに生きてくなら
この水を捨てて
今殺してよ…
永遠にしてよ…
『アクア、バイバイ…』