相続税の節税対策、申告、ご相談なら、見田村元宣の「あんしん相続解決室」-DSC_0690.JPG

昨日、書いた記事「名義預金、借名預金と相続税の税務調査」の続きです。


当然のことですが、贈与された後の預金は贈与された人(受贈者)の物です。


だから、その受贈者本人が預金を管理し、常に自由に使えるようになっていることが重要です。


もちろん、受贈者が未成年者の場合は親が親権者として(法定代理人として)管理しているということはOKですが。


これも贈与に関しては重要な要素ですが、ここもそうなっていないケースがよくありますので、ご注意くださいね。

今までメルマガで何度も書いてきたのですが、相変わらず、同じご相談があり、同じミスに陥っている方が多いので、ここでも再度、書きます。


おじいちゃん、おばあちゃんが子供や孫の名義で預金を積んでいることは多いですよね。

しかし、その多くは贈与が成立しておらず、おじいちゃん、おばあちゃんが【単に】子供や孫の名前を借りて預金していただけという取扱いになります。

つまり、この子供や孫名義の預金はおじいちゃん、おばあちゃんの相続財産となってしまうのです。


ここは相続税の税務調査でも最も重点的にチェックされる部分であり、多くの方は税務調査官からすれば「こんな初歩的なミスを犯して頂き、ありがとうございます。簡単に見つけられました。ここをミスされる方は多いのでありがたいのです。」という状態になっているのです。


贈与税の申告をすればいいと思っている方もいますが、それも違います。


実際、平成19年6月26日の国税不服審判所の裁決でも下記の旨が示されています。


○贈与税の申告、納税は1つの証拠にすぎない

○贈与が本当にあったかどうかは具体的な事実を総合勘案して判断


だから、①贈与契約書を交わすこと(贈与を受ける人が未成年者であれば、親権者が法定代理人として契約)、②贈与は振込みにより行なうこと、という2点が非常に重要なのです。


では、既に行ってしまった贈与についてはどうすればいいかというと、過去の贈与につき、当時に贈与があった旨の確認書を作成すればOKです。


なお、ここでは実際のひな型までは書き切れないので、次回のメルマガに書きます。


具体的には、贈与契約書(成年者バージョン、未成年者バージョン)、贈与に関する確認書の3点です。


ちなみに、これは税務に詳しい弁護士のリーガルチェックを受けたものなので、ご安心ください(もちろん、メルマガでは無料で公開します)。


よろしければ、下記より、メルマガにご登録くださいね。


http://www.zeimu-cyousa.com/








下記記事で「母親の死亡を届け出ておらず、10年9月に白骨化した母親の遺体が自宅で見つかった。」と報道されています。


http://www.nikkei.com/news/article/g=96958A9C93819499E3E5E2E39B8DE3E5E2E7E0E2E3E0E2E2E2E2E2E2


さすがに、ここまでする人はほとんでいないでしょうが、逆に言えば、死亡届を出さなくても、脱税は見つかるということです。


こういう場合、結果として、重加算税、延滞税、罰金が取られ、相当な額の追徴課税となります。


相続税は脱税するのではなく、節税をすることが重要ですね。

公正証書で作成すれば、それは完璧な意味で成立すると思われている方がいますが、そうではありません。


実際、不動産を贈与したが、贈与税の申告をせず、税務上の時効が成立してから登記をして贈与税を回避しようとした下記事例があり、否認されています。


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公正証書による財産の贈与時期は、公正証書が作成された日ではなく、本件不動産に係る所有権の移転登記がされた日であるとした事例(平成9年1月29日裁決)

請求人は、公正証書による財産の贈与時期は、本件不動産に係る所有権の移転登記がされた日ではなく、公正証書が作成された日である旨主張する。

しかしながら、[1]贈与税課税の除斥期間が経過するまで所有権の移転登記がされていないこと、[2]公正証書の作成目的が租税回避以外の必要性がないこと及び[3]公正証書の記載内容と異なる行為が行われていることから、当該公正証書は実態を伴わない形式的な文書と認めるのが相当であり、これにより贈与が成立したとは認められない。

したがって、本件不動産の贈与の成立した日は、第三者に対抗するための法律要件が成就した日(所有権移転登記が行われた日)と認めるのが相当であるから、本件決定処分は適法である。


国税不服審判所ホームページより

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ケースは違いますが、その他にも公正証書による遺言書について相続人間で争われ、公正証書による遺言書が無効となった裁判例もあります。


これが無効になった理由は被相続人の痴呆で、作成時の証人として司法書士も立ち会っていたのですが、遺言書を作成できる状況ではないことに気付かなかったそうです。


公正証書で作成した書類は絶対的なものだと勘違いされている方もいますので、ご注意くださいね。

自分の会社であれ、他人であれ、被相続人が生前に貸していたお金は相続財産になります。


ただし、そのお金が回収できない可能性が高いという場合もあり、その場合まで相続財産に含めなければならないのか?という問題もあります。


こういう場合を想定し、財産評価基本通達の205では「課税時期において次に掲げる金額に該当するときその他その回収が不可能又は著しく困難であると見込まれるときにおいては、それらの金額は元本の価額に算入しない。」とあります。

しかし、この「回収が不可能又は著しく困難」という考え方に基準はなく、否認されている事例もあります。


http://www.kfs.go.jp/service/MP/04/0308000000.html


被相続人が貸しているが 「回収が不可能又は著しく困難」かという税務判断が微妙な場合で、かつ、「もう回収できなくてもいい」と思っているなら、生前に債権放棄をしましょう。


ただし、債権放棄に伴い、たとえば下記のような検証が必要となります。


・個人に対する債権放棄が贈与にならないか?


・同族会社に対する債権放棄の場合、債権放棄により他の株主に株価がどの程度上昇するか?


後者の解説をすると、同族会社の株主が被相続人と妻の50%ずつだったとします。


この場合、被相続人が生前に債権放棄をしたならば、この会社の財務状況は良くなるので、株価は上昇する可能性があります。


債権放棄しても0円のままで変わらないということもありますが。


この株価が上昇したことにより、妻の持っている株式の価値が30万円から200万円になったとするならば、この差額170万円が生前の被相続人から妻に対する贈与になり、贈与税が発生するのです。


もちろん、この贈与額が少額であれば大きな問題にはなりませんが、額が大きい場合は別問題です。


こういう問題も検証した上で、債権放棄をしなければならないのです。

昨日配信したメルマガに詳しく書いたのですが、 「毎年100万円などの定額贈与は否認される」と思っている方もいますね。


だから、毎年の贈与する額を変えてみたり、毎年の贈与する日を変えたり(例:子供の誕生日など、覚えやすい日にしない)しています。


また、基礎控除額110万円を超えた贈与をして、意図的に贈与税を払ったり、基礎控除額110万円以下でも贈与税の申告を行なったりもしています。


しかし、これは間違っています。


税務調査官が連年贈与として否認するためには、そもそも「連年贈与の総額」を根拠付けなければなりません。


しかし、贈与は民法にも定めてあるとおり、贈与者が無償で渡す意思表示をし、かつ、受贈者がもらう意思表示をして初めて成り立つものです。


だから、贈与者の頭の中に「10年に渡って贈与しよう」という意思があっても、受贈者にはそれはわかりません。


また、未来の贈与は実際に行なわれるかどうかも未確定ですし、それが行なわれたとしても、それは結果論です。


結果として、連年贈与の総額は確定しにくいので、否認もしにくいのです。


もっといえば、「仮に」確定できたとしても、その連年贈与(最初に贈与した年)が10年前の話であれば時効なので、贈与税を賦課することはできませんね。


ということで、結果として、連年贈与が否認され、贈与税が課せられるケースはほとんどないでしょう。


繰り返しになりますが、連年贈与の総額なんて、現時点では決められないのです。

登記上、固定資産時課税上などの地籍が実際の地籍と異なることはよくあることです。


もちろん、こういう場合は実際の地籍で土地の評価をするのですが、これについて争われた事例があります。


もちろん、納税者が勝っているのですが、これが争われたという事実にびっくりです。


これは納税者が勝って当然ですからね。


ご参考になさってくださいね。


昭和62年1月21日の国税不服審判所の裁決です。


以下、国税不服審判所のホームページから転載します(一部、削除)。


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実際地積が固定資産税評価額算定上の課税地積と異なる土地の倍率方式による評価額について実際地積により評価すべきであるとした事例


実際地積が固定資産税評価額算定上の課税地積と異なる土地を倍率方式により評価する場合、固定資産税評価額を課税地積で除して得た1平方メートル当たりの金額に実際地積を乗じ、更に評価倍率を乗じて算出された金額をもってその評価額であるとすることは、課税時期の時価をもって相続財産の価額とする相続税法第22条の規定からは当然であり、実際地積は関係がないとすることはできない。
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相続税の税務調査があり、本件の贈与証明書による贈与が贈与なのか死因贈与※なのかが争われた事例です。


※死因贈与とは被相続人の死亡を原因として効力を発する贈与で、税法上は遺贈(遺言で財産をもらうこと)と同様に取り扱われます。



以下、国税不服審判所のホームページからです。


<金員の取得原因は死因贈与ではなく贈与によるものであるとした事例>

http://www.kfs.go.jp/service/MP/04/0102000000.html

http://www.kfs.go.jp/service/JP/73/23/index.html

未成年者の場合、小学校高学年以上などの一定年齢にならないと贈与は成立しないと思っていらっしゃる方がいますが、これは違います。


なぜならば、贈与とは民法で定められた制度であり、特に年齢制限を設けた条文はないからです。


実際、過去の国税不服審判所の裁決でも「未成年者への贈与の場合、親権者が同意すれば贈与契約は成立する」、「未成年の子が贈与の事実を知っていたかどうかは関係ない」という旨が示されています。


かなり著名な方の書籍でも間違って書かれているし、同じことが他の複数の書籍にも書かれています。


しかし、これは間違っています(税務に精通した弁護士にも確認済)。


相続対策を考えられる方は勉強熱心なので、色々な書籍をお読みになることがあると思いますが、ここを勘違いされないようにしてくださいね。

相続税の節税対策、申告、ご相談なら、見田村元宣の「あんしん相続解決室」-DSC_0307.JPG

たとえば、0歳の赤ちゃんに対する贈与は成立しないという人もいますが、これは本当でしょうか?


これは嘘で、0歳の赤ちゃんに対する贈与は法的に成立するのです。


なぜならば、贈与は民法で定められており、贈与を受ける人(受贈者といいます)の年齢制限を特に設けていないからです。


ただし、未成年者の場合は両親(離婚していない前提)が親権者なので、贈与契約書を作成するならば、両親が法定代理人ということで、印鑑を押すことになります。


たとえば、祖父から未成年の孫への贈与の場合、贈与者:祖父、受贈者:孫となります。


この場合、贈与契約書に印鑑を押すのは祖父と孫の両親(祖父から見たら自分の子とその配偶者)ということになります。


未成年者であっても、ある程度の年齢にならないと贈与は成立しないと思っていらっしゃる方もいますが、それは違います。


だから、30歳、40歳という若い年齢の段階からでも、まだ幼い子供に生前贈与をして、相続税対策をすることができるのです。


特に、贈与税が非課税となる110万円(基礎控除額)以内で生前贈与を行なおうと思っていらっしゃる方は長い年月がかかります。


受贈者の年齢は関係ないので、生前贈与をするならば、早めに始めた方が効果が大きくなるのです。


覚えておいてくださいね。


ちなみに、この内容は弁護士にも確認した内容です。