遺言を書く場合、自分の死後の相続人間の争いが起きることを想定している場合も多いかと思います。

仮に、そうでなかったとしても、「必ず入れておくべき1文」があります。

それは「A※が自分(遺言者のこと)よりも先に他界した場合はAの子供に相続させる」という旨の1文です(※Aさんは遺言により、財産をもらう人であり、ここでは自分の子供とします)。

子供が親よりも先に他界するケースは少ないですが、あり得る話です。

また、遺言者の遺志として、たとえば、Aが遺言者の長男であれば、その引き継がれた財産は当然にAの子供に引き継がれていくもの、と考えていたと思われます。

実際、東京地裁(平成20年11月12日)もそう判断しています。

しかし、東京高裁(平成21年4月15日)は「遺言書からは『遺言者の死亡以前に長男が死亡した場合はその子供に効力が及ぶ」という旨を読み取ることはできない」と判断し、最高裁(平成23年2月22日)もこの判断を維持しました。

結果、争いのあった次男にも不動産を取得する権利が生じてしまったのです。

遺言者の「本来の思い」からすれば、東京地裁の判決なのでしょうが、司法の最終判断はそうはなりませんでした。

当然ですが、この「本来の思い」を実現したいならば、この旨を入れたメリットはあっても、デメリットはありません。

しかし、多くの遺言にはこの旨の記載がないので、ご注意頂ければと思います。

弁護士が付いていてフォローしている遺言書、公証役場で作った遺言書でも、この記載はされていないことは多いのも事実ですので。