【相続放棄体験記】自分で手続きをして初めてわかった重要なこと!

【相続放棄体験記】自分で手続きをして初めてわかった重要なこと!

このブログでは、父が死亡した際、母と姉と私の3人が相続放棄を決意し、書類作成から提出、相続放棄申述書の受理通知書を受け取るまでについて、手続き上の問題点や書類の記載内容、費用などの疑問点を調べ、解決した方法について体験記の形で綴っていきます。

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前回の記事不服申立て制度の概要と注意点に続いて、今回は、私が不服申し立ての際に行おうと考えていたこと、これに向けて準備していたことについて説明をしていきます。

 

 

 

 


まず、結論から言ってしまうと、
 

1・専門家に相談または依頼すること
2・認められなかった理由を分析するために提出書類すべてについてコピーをとっておくこと


…です。

以下、相続放棄の申立てが却下されたということの重大性と、私が準備していたことについて説明をしていきます。

 

 

 

1・相続放棄の申立てが受理されなかったことの意味


まず、「相続放棄の申立てが受理されなかった」ということが、どのような意味を持つかについて説明をしていきます。


以前、上申書の書き方(総論2)で、相続放棄の可否の審査をする裁判官はどのような思考プロセスを経て判断に至るのかについて説明をしました。


ここで説明をしたとおり、裁判官は、相続放棄の必要条件となる

 

1・被相続人(故人)が死亡していること(民法882条)

2・相続人が「自己のために相続の開始があったことを知った」(自分が相続人であると知った)時から3か月以内に申立てをしていること(民法915条1項本文、921条2号)

3・被相続人(故人)の最終住所地を管轄する家庭裁判所に放棄の申立てをすること(民法883条、938条)

4・法律効果の発生を妨げる要件(民法921条各号)が存在しないこと


…の事実が存在するか否かを審査して判断したわけです。


そして、

・相続人と故人の債権者との紛争が現実化していない段階
・相続人が相続放棄の申立てを行った場合、

相続放棄に関する実務では、相続放棄の要件が認められないことが明白な場合に限って却下(相続放棄を認めない)という判断ができると考えられており(梶村太市=徳田和幸編著『家事事件手続法(第3版)』436ページ)、この考え方は裁判実務においても支持されています(3か月の熟慮期間について仙台高等裁判所平成8年12月4日決定参照)。


刑事訴訟法には「疑わしきは被告人の利益に」(あるいは「疑わしきは罰せず」)という原則がありますが、相続放棄の審判においては、相続人と被相続人(故人)の債権者との紛争が現実化していない段階における申立てであれば、これと類似した「疑わしきは申立人の利益に」判断されるという実務上の取り扱いが事実上なされているわけです。

ということは、今回、家庭裁判所が相続放棄の申立てが受理されなかったのは、審査を担当した裁判官が、上記の相続放棄の要件のいずれかについて、「明らかに認められない」という判断をしたということになるわけです。


つまり、被相続人(故人)が亡くなり、いまだ故人の債権者との争いが現実化していない段階において相続人が相続放棄の申立てをしたという状況にもかかわらず、家庭裁判所が相続放棄の申立てを認めなかった(却下した)ということは、


審理を担当した裁判官が
 

・要件となる事実があったか否か不明

 

というレベルを超えて、

 

・要件となる事実がなかった(効果を阻害する要件事実があった)

 

…ことが明らかであると判断をした。

 

(分かりやすく例えるならば、裁判所が「白か黒か不明(グレー)である」というレベルを超えて「黒である」と判断した。

…ということをしっかりと認識することが重要です。


 

2・不服申立ての際に行おうと私が考えていたこと


次に私が不服申立てを行うに当たって行おうと考えていたことです。

最悪の事態に備えて私が考えていたことは、専門家に相談(あるいは依頼)し、裁判所が申立てを却下した理由の分析と、これを覆す主張や証拠を準備することです。


 



上で説明した通り、相続放棄の申立てが却下されたということは、相続放棄の要件となる事実が明らかに認められないという判断を裁判所がしたということです。

しかし、相続放棄の申立て却下の決定書には、却下した理由は書かれていないはずです(家事事件手続法81条1項後段、76条1項参照)。

そこで、即時抗告で、高等裁判所にこれまでの判断を覆させるためには、家庭裁判所が上記に示した相続放棄のうち、どの要件について認められないという判断をしたのかを推測し、これを補強する主張や証拠をそろえる必要が不可欠となるわけです。

この分析については、法律に関する知識と経験が大きく左右しますので、やはり専門家のアドバイスは不可欠といえるでしょう。

そこで、自身が行った相続放棄の申立てに関して気になる点を専門家の先生に説明し、先生と一緒に対策を考えていく方法を考えていました。


 

3・即時抗告に向けて事前に準備していたこと


そして、相続放棄の申立てが却下された際に、専門家の先生に相談することを前提に私が事前に準備していたことは、
 

戸籍謄本などの公的な文書以外の書類について提出したすべての書類についてコピーを取っておく


…ということです。


 



つまり、相続放棄に際して提出する書類は多数ありますが、その中には「相続放棄申述書」や「上申書」、「照会書」など、自分で作成するものが少なくありません。

そして、裁判所に出頭して申述した場合を除き、家庭裁判所は提出された書類をもとにして審理をするので、これらの書類は一言一句間違いなく再現したものを準備することが必要です。

そこで、私は、家庭裁判所への提出書類については、すべてコピーをとり、保存しました。

パソコンで作成した上申書についても、裁判所への提出に際して訂正した部分があったので、データの修正ではなく、修正をした提出書類をコピーし、保存しておきました。


つまり、裁判所への提出書類については、戸籍謄本など100%再現できる書類以外は、すべてコピーを保存することによって、どの要件に関する主張が裁判所に認められなかったのかを事後的に検証できるようにしておくことが必要であると考えました。

こうして、相続放棄を認めない旨の決定が出た場合、即時抗告に向けて専門家に相談をして分析と対策を練ることを前提に、その判断材料となる家庭裁判所への提出書類について、事前にコピーをとっておいたわけです。


 
これから相続放棄の申立てをしようとする方への提言!

私の経験をもとに、これから相続放棄をしようと考えている方へ提言をするならば、

・家庭裁判所に提出(送付)する直前
・回答書を送付する直前


に、近くのコンビニに駆け込んで、書類のコピーを必ずとっておきましょうということです。



相続放棄が認められなかった場合に私が考えていた対策と準備については、以上になります。