　最近たまたま見つけたのですが、以前にこちらで何度か取り上げた「騎士団長殺し」について日本語版ウィキペディアにページが出来ていることを知りました。

「マニラの戦い」という名前で載っているはずです。

　あ、これは村上春樹氏の小説とは関係の無いお話です。フィリピンの歴史の勉強の中で、倭寇がマニラを襲ったときの絵があるのですが、それが倒れたスペインの騎士を手前に、その奥にクリスや刀で武装した海賊たちを後ろに描いたものであるために、このあだ名をつけて勝手に呼んでいるだけです。

　このマニラの戦いと呼ばれている事件は、いつもこちらで扱っている海賊武術、および中国武術史上の一大パラダイム・シフトである嘉靖の大倭寇に直結した物です。

　これまでも何度も扱っているので大枠だけおさらいすると、親玉だった五峰王直が処刑され、戚継光将軍によって大乱も鎮圧された後、倭寇の残党たちはこれまた一流の武術家として名を残している兪大猷将軍によって追撃を受けてその勢力を衰退させてゆきます。

　この頃の台湾は、彼らの潜伏先となっており、一大海賊島だったと言います。

　これらの倭寇はやがて、次なる入植先を求めてフィリピン各地に少しづつ移住をしてゆき、最終的にマニラを乗っ取ろうと計画します。

　この頃のマニラは、スペイン入植からおよそ半世紀、私も行ったイントラムロス要塞がすでに配備されていたと言います。私が撮影した写真を添付いたしますね。

　この襲撃の首魁は林鳳というのですが、当時のスペイン人、ゴサーレス・デ・メンドーサの書いた「シナ大王国誌」にはリマホンとして記述されているそうです。

　彼らはフィリピンの船を襲撃した際に人質に取ったスペイン人から、マニラのスペイン兵の数が２００人ばかりだと言う情報を得てこの乗っ取り計画に踏み出したようです。

　女子供を含めて一族郎党をすべて船に詰め込んで出発したようですが、これもまた参考までに私が現地で撮影した写真を添付しましょう。

　よく見ると、甲板には武士姿の人が居ます。

　倭寇の中に日本人である真倭は一割程度だと言われていますが、この襲撃で先陣を切ったシオコと言う部将は日本人だったことがしられています。

　ちなみに、彼等真倭のみならず多くの襲撃者はカタナで武装していたと記録があります。

　日本刀はフィリピンでも「カタナ」と呼ばれており、これは今にも続いています。

　現地のタクシーの運転手さんに「何をしにフィリピンに来たんだ？」と訊かれてアルニスの修行に来たと言う話をしていたとき、彼が「なんといったかな、あの、日本のナイフがあるだろう？　カ……カ……」と言っていたので「カタナ？」と促したら「そうそう、カタナだ！」ということがありました。

　ちなみにこちらも、水没していた物を引き上げられたフィリピンの日本刀の写真を添付しておきます。

　先ほどの船の模型やこちらの刀はマニラの博物館に展示されていたものです。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　つづく

歴史に見る初期エスクリマの記録 １