で、長くなるからまた続いたんだけど。
これで終わらせるので。

元夫の態度が改まる事を願っていたが、そうは問屋が卸さなかった。

彼はしばらく遅くとも終電で帰って来ていた。

しかし、またちょっとしたら朝帰り。


元夫は当時27歳になろうとしていた。
この時も5歳下だったんだよね。タラー
別に年下が好きなわけではないんだけど、その後付き合ったNZ人も5歳下。で、D猫は14歳下…。

彼はその歳になるまで、いわゆる夜遊びというやつをした事がなかった。

当時32歳だった私は、もうひと通りそういう遊びはやってきてしまっているので、もうクラブに行って騒ぎたいみたいなのはなかったし、っていうか、そんなにそういうのは好きじゃない。

しかし、彼はクラブ遊びにハマってしまったのだ。
騒ぎたいとか言ってる人種が大嫌いで、クラブから一番遠いところにいるような人種だったのに。


「Mが俺に新しい世界を見せてくれたんだ。」

と。



その「新しい世界」とやらを見てから、彼はタバコすら吸ったことないのに葉巻を吸うようになり、バーでオレンジジュースを飲んでたような人間だったのに、ショットを何杯も煽って酔い潰れたり…タラー

まぁたまにいるでしょ?
こういう「25歳デビュー」な人。
ワーホリで来てクラブとかバーに来てる子でも、そんな感じの子いるよね。

「厨二」拗らせてんだかなんだか知らないけど、いきなり無茶な事する人多いよね。

いい歳してタガが外れちゃう人ってホント外れ方が半端なくてめんどくさい。
ま、自分もそういう点はあるけど。

しかも、本人に大人っていう自覚があるからこそ、周りの意見に耳を貸さず、修正も効きづらくて大変なんだよね。

反抗期が今やってきた…みたいな感じ。


そんなわけで私は、元夫の既婚者と思えない振る舞いに、疲れ果てていた。

彼の様子は日に日におかしくなっていった。

トイレに携帯を持って入ってずっと篭ってたり。

四六時中ずっと携帯を見ていて、私といるときに私と話すことなく、ずーっとメールをしていた。

そして、私に対する態度もどんどん冷たくなっていった。

私は、自分の存在を軽視されてる感じが本当に耐え難かった。

本当にほんの半月前までなんの問題もなかったのに、何?この真逆の世界は?


ある日、また帰ってくるはずの時間に帰って来なかったので、ふざけんなよって思ってたらメールが入った。


「Mが死にたいって言ってて、誰かが側に居ないと死んじゃうかもしれないから、彼女の側に居てあげたい。」と。


はあ?
バカか?こいつ。


私の一番嫌いなタイプの気の引き方だし、そういう事に振り回されてるやつもバカだと思う。


ブチギレた私は電話をした。
しかし、電話に出んわ状態。

少ししてからFワードを使ったメールをよこした。

「今それどころじゃねーよ!状況考えやがれ!」

…って、そりゃオメーだよ!ムキー




80年代の少女漫画の中に出てきそうなタイプだよね。
まぁ、実世界にも結構いるもんなんだよね。
友達の彼女とかがそうだったな。


▲この中に出てくる品川ミクっていう子がね、まさになんかそういう系の子なのさ。そんな話ばっかで少女漫画大嫌いになってしまった。




家族や周りも私がどんどんやつれていくのを見て心配していた。



妹が「ねえちゃん、アシュリー(元夫)の携帯見てみたほうがいいよ!!!不倫の証拠掴まないと!!!」という。



これはとてつもなく悪魔のささやきだった。




はあああ?!?!って思ってたけど、もう私はとうに正気を無くしていたから、このおかしな行動の正体を掴まなければ人生がめちゃくちゃになるぞと思ってしまった。


人の携帯見るとか絶対無理なんですけど…。


しばらく実行には移さなかったが、数日後、彼は出かけるためにシャワーを浴びていた。




私の目の前に彼の携帯がある。





私は、妹の言葉がグルグル回ってた。



「不倫の証拠…」


とうとう手を伸ばし、開いてしまった。


私と同じ機種だったから、何をどうすればいいかはわかってたので、スムーズにメールを見ることができた。



Mからのメール、私からのメールで画面が埋まっていた。


もうこの時点で私の頭は完全に思考停止していた。

罪悪感も何もなくなっていたのだ。


直前に来たMからのメールを開いた。


「何時くらいになりそう?」というものだった。


ふーん。

ま、今日も会うわけね。



で、なんとも思わずに次のメールを開けた。


そこにはかなり激しい言葉が書かれていた。








「私の脚の間にあなたの頭が見える時、私は幸せを感じる。」(※英語訳)








つまり…
そういう事だ。18禁










携帯逆パカしそうになった。



他のメールも読んでみた。

「ダーリン、私たちが一緒に暮らす日はいつなの?」














この携帯からMにメール送りつけてやろうと思ったが、しなかった。

それどころか、夫がシャワーから出てきてしまった。




「わーったふぁーーーっく(WTF)お前!何やってんだよ!!!!」



私は突き飛ばされ、持っていた携帯が宙を浮いた。


突き飛ばされ、私の怒りがまたドカーンとなって、
ここからかなり大きな声で色々言った。

もう言葉にならない言葉を発して、大声で泣いた。


人生色々あったけど、あんな風になったのは人生であれが最初で最後。


だし、ホントに携帯なんか見るもんじゃないなって思った。

それも、あれが最初で最後。
なんか他人の携帯って、その人の歯の裏とか見てる気分になる。



あぁもうウチらは修復出来ないなと思った。

私の頭の中では「いくらなんでもジャッジ早すぎじゃない?」「結婚って忍耐でしょ?」「彼だって色々うちの家族の事とかで疲れてんだよ。」「私に対してずっと何か我慢してたからこういう結果になったんじゃない?」「もう少し待ってみたら?」

などなど、ヒロシ&キーボーの歌声をBGMに自分の中の自分が、囁きかけていた。






でも、そういうごちゃごちゃした頭の中の声を全部押しのけて、離婚を提案した。

心の底から湧き上がってきた想いだった。

ホントにこの言葉を告げるのには心臓が切り裂かれそうだった。

でも、言ったらスッとした。


すると、元夫は固まって、涙を流し始めた。
そして「それだけはしたくない。そんなこと言わないでほしい。」と言ってわたしを抱きしめた。


でも、もう私は無理だなと思ってた。
そういう事実がある以上、許すことは出来ないと思った。


仏の顔も三度までとは言うが、もう十分使い果たしたと思った。



離婚という言葉で彼が思い直してくれるなんて期待はしていなかった。
その為にそんな言葉を出したわけではない。


けど、「オレは絶対お前と離婚なんかしたくない!だから、いい夫であるように努力するから。」と言ってきたので、その時は許して、私も携帯を見てしまったことを謝った。



元夫はその後すぐには出かけなかった。



でもその数時間後。
彼の携帯にメールが入った。


Mからだったのが背面スクリーンから見えた。


私は彼の改心をどこかで期待しながら、彼の一挙手一投足を逃さないような感じで、成り行きを見つめていた。


彼は気まずそうに、そんな私をチラッと見てから携帯を開け、メールを見るなり青ざめた顔になり、電話をかけながら慌てて外に飛び出していった。

私は状況が掴めずただあぜんとしていた。


外の駐車場から「ノー!ノー!!!」という元夫の声が響いてきたので、気になって外に出た。

すっかり外は日が暮れて、街灯にぼんやり照らされる中に彼が右往左往していたのを、マンションの二階の共用通路から見ていた。

彼は人目も憚らず大声を出したりしないので、何が起きたのかと、私も身が固まった。


そして「わかった!!!今すぐそこに行くから!!!わかったから、お願いだから死なないで!!」と叫ぶように言っていた。




…え?



またですか?



私はすっかり呆れてしまってた。




彼は階段を駆け上がって来て「Mのところに行かないと!」と、血相を変えながら言うので、

「ちょっと待ってよ!!さっきの言葉なんだったの?!」と、問い詰めた。


彼は私を跳ね除けて「ごめん。それどころじゃない。」


と言って出て行った。



もう追いかける気力もなかった。



うん、離婚だ。
私は私の人生を楽しもう。



父に事の次第を話し、義兄、義父にもメールした。


「…そんなわけで、私はもう彼と一緒の人生は考えられないので、離婚します。」と告げた。



義兄たちは「おいおい、そんな早急な!相談ならいくらでも乗るから!」などと言ってくれた。
そして義兄は、元夫に事情を確認するメールを送ってくれたり、電話してくれたりした。

英語で色々うまく言えなかった私は、いつも義兄にこうして助けてもらっていた。


うちの父も最初の方は「お前がいちいちカリカリし過ぎなんだよ!彼は優しくていいやつなんだから、逃したら勿体無いよ!」とか言ってたけど、時が経つにつれ「…うちの娘を裏切るなんて許せないって、英語が出来たら怒鳴り倒してやりたい!」と言うようになった。

いや、日本語でもいいから言ってくれって思ったけど。




まぁとりあえず、元夫は、また恒例のごとく次の昼間に帰ってきた。


もう、何も言う気力がなかった。


彼は離婚だけはしないと言い続けるくせに、Mとの関係を終わらせず、相変わらず昼帰りを繰り返す日々が続いた。

そんな中。

たまたま共有のパソコンのブラウザが開きっぱなしだった。

自分がネットをしたかったから、別に見たくてみたわけじゃないけど、そこには都内の1LDKから2Kくらいのサイズの物件がズラズラと出ていて、地域も勤務先から通いやすい場所だった。


この頃は、もう地獄生活2ヶ月目だった。


彼は私と離婚せず、こうして新しい生活を送ろうとしている。

意味がわからん。


私は、Mとうまくいかなかった時のための保険とか?


一体何がしたいんだろうか?
私の存在、なんだと思ってるんだろ?

自分のことしか見えてない。
いや、自分のことも見えてないからあんな事になるんだろうと、今だから思う。


婚約してから、幸せ太りで50kg超えてしまって、中々落ちなかった私の体重は、7kgも落ちてた。


たったの2ヶ月でよ。


ふと、いつも普通に履いてるパンツがよくずれ落ちるなぁと思ったので、お腹を触ってみたらあの重たくのしかかる物体が小さくなっていた。

体重計にのったら、43kg!
18歳以来の体重になってた。ラブ


なんか、私ったらここで一気に元気になったんだよね。

単純。チュー



一気に太ったせいで、一年足らずで着れなくなったスーツもシャツも着れるようになっちゃったもんだから、気分が晴れやかになって、パパーーン!!と、思いきって遊びに出かけることにした。


もう、彼はMと暮らすんだ。
だからいいじゃん、私は私の人生を楽しもう!

あんなアホに私の人生めちゃくちゃにされてたまるか!!


ってな感じで、毎晩飲み歩いて、友達にも離婚するって話をした。


そして、もう何もかもに疲れた私は、こうなったら結婚してたら絶対に出来ないことをしようって思った。

ワーホリにはもう行けない歳だし、リゾートバイトをすることにした。
しかも東京から1000kmも離れた、北の離島に行くことにした。

とにかく、もう遠くに行きたかった。
行ったこともない、行きたいとも思ったことのない、縁もゆかりもない土地で、色んな人と出会いたいし、私も「新しい世界」を見ようと強く思った。

まだ32歳だし、まだ誰かと恋愛することだって十分できる!
今度こそ絶対に幸せになるぞ!

安定した仕事、職場仲間にも恵まれてたから辞めるのは本当に悩んだけど、10代からの付き合いの友人が「いっしーらしく面白そうな方に行こうよ!」と言ってくれて、踏ん切りがついた。



そして2009年6月4日。
今から10年前。

元夫はMと暮らす家へ。
私は最北の地を目指し旅立った日。

現在へと繋がる新しい人生が始まった日なのだ。

私は、自分のサインを全部済ませた離婚届を机に置いて出て行った。
「あとはアンタが全部埋めて、その辺の役所に届けて…」と、書き置きをし、家を出た。

この時せめて最後にハグぐらいしにくるかと思ったのに、彼はMの家から帰って来ずのままだった。

後始末の悪いやつだなと思ったけど、これもまぁ予期できた事だし、ある意味完全に奴に見切りをつける事が出来てちょうどいいかって思うことにした。


2ヶ月で7kg痩せた私は、その後2ヶ月飲み歩き、順調に4kg太った。

でも、もうこの頃には嵐を乗り切った気分でスッキリしていた。


私は北海道の二つの離島で働き、その後、貯めたお金で北海道を一周し、本州に戻り、青森の農場で秋の収穫のバイトをしていた。

中々離婚届出したっていう連絡が来なかった。



私、いつ離婚するのかな?
早くバツイチになりたいよー!!
スッキリしたいよー!!



と思ってた秋の夜長に、元夫からメールが来た。


「ヂボース(Divorce)はおわりです。サヨナラ。」

と、一言。


こいつ…
どこまで舐め腐ってんだ?

こういうのメールで送るって…

私はこんな人と4年も一緒だったのか…と呆れてしまった。


とにかく晴れて私は離婚した。


彼が離婚したくなかったのは「だって離婚なんて大きすぎる事だから、怖くて。」との事だった。


私だって、離婚届書く時手ェ震えながら書いたっつーの。

「婚姻の時と紙は似てるのに、気分は真反対だわ。」って思いながら書いたってば。


だいぶ端折って書いたけど、私の離婚劇はこんな感じ。


私のリゾバ生活は5年ほど続いた。
ほんとは3ヶ月だけのつもりだったのにね。

北海道と沖縄の離島。
青森、そして北アルプスの山の中と色々巡った。

そして、今ブリスベンで5年以上留まっている。

あんだけ流動的だったのに、今こうして同じところに居続けている。

人生って不思議だなぁ。